ズコットを食べながら観たのは『日本列島』のDVD。
- 出版社/メーカー: NIKKATSU CORPORATION(NK)(D)
- 発売日: 2007/12/14
- メディア: DVD
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占領が終わっても重くのしかかるアメリカと、その下で身動きのとれない日本の無力感を描いた映画。なのだが、どうしてそのDVDがあるのかといえばJ先生が買ったからで、どうしてJ先生が買ったのかといえばいづみさまが出ているからである。なのでつい「いづみさま映画」という視点で観てしまう。
芦川いづみの魅力は、清楚、上品、生まじめといった外見の下からいやおうなしにのぞく異常さ、すなわち憑かれているような感じとか行っちゃってるような感じとか、あるいは狂信的な雰囲気とかのコントラストである。どのくらい異常な感じが出ているかを「いづみさま度」と定義すると、この映画はもう、いづみさま度100%である。
映画が始まってからしばらく、いづみさまは登場しないが、焦らせたあげく「わたくし、ふつうじゃありませんの」という風情で登場。いくら幼時に目の前で父親を拉致されたという異常な経験をもつとはいえ、ふつうじゃない度満開で、目つきがずっとヘン。例によって行き遅れ気味のいづみさまは、コブつきヤモメの宇野重吉に目をつける。しかし彼は殺されてしまい、それを聞いたいづみさまは突然叫び出す。ふつうなら「やりすぎでは?」と引いちゃうシーンも、それまでの異様な雰囲気が効いているのと、いづみさま度120%の展開にニヤリとする。ちなみに、もうオトコは捨てたという風情を見せながら、さりげなく女たちを手なずける宇野重吉の手管にも感心する。
もっと無力感が漂っていいはずのストーリーだが、ラストは「このままにはさせておかない」という監督の決意を、いづみさまお得意の前向き思考に託しているため、妙に後味が爽やかである。父親と宇野重吉の死によって呪縛から解放されたいづみさまの目つきからはひとまず異様さが消え、それまで洗ってなさそうだった髪もさっぱりしている。いづみさまのオモテの魅力を主にしつつ、かすかに狂信的な光が見え隠れする。こうしてみると、熊井啓は芦川いづみの魅力を理解し、かなりうまく使っているといえそうだ。これ一作なのはもったいない。
撮影は姫田真佐久。この人のことはよく知らないのだけれど、佐野浅夫のお葬式と宇野重吉の死のシーンの、強い風に砂ぼこりが舞っているところとか、モノクロ映像の白と黒のコントラストとか、宇野重吉と芦川いづみが話している口から下が影になって見えないところとかが印象に残った。