実録 亞細亞とキネマと旅鴉

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『海の情事に賭けろ』(野口博志)[C1960-51]

久しぶりの映画はラピュタ阿佐ヶ谷のモーニングショー。「昭和の銀幕に輝くヒロイン[第40弾]」は中原早苗。日活の女優では、中原早苗がいちばん好きだ。行かないわけにはいかない。日活の男優では、小林旭の次に赤木圭一郎が好きだ。今日のプログラムはそのふたりが主演の『海の情事に賭けろ』(映画生活/goo映画)。行かないわけにはいかない(本当は『才女気質』も観たかったけれど、旅行準備に追われて観られなかったのが残念)。

監督は野口博志で、そんなにたいした映画でもないが、とにかく中原早苗が魅力的で輝いている。中原早苗って、「美人か?」といわれるとそうともいえないし、「かわいいか?」といわれるとそれも違う気がする。だけどとにかく魅力がある。豪快な性格の女性が彼女のはまり役だが、本作では典型的なお嬢様で、それも似合っている。生まれながらに「持てる人」であることから自然に身についている自信と、そこから発せられる輝きとが、彼女の天真爛漫な雰囲気によく合っている。ちなみに、典型的なお嬢様といっても、芦川いづみが得意とする(かなり変な)深窓の令嬢とは対極にあるタイプである。

『あした晴れるか』[C1960-42]と同じ1960年の映画。海や海辺のシーンが多いので、気前よく足などを出している。『あした晴れるか』で、芦川いづみに「何よ、くろんぼ」と言われるのは、この映画で日焼けしたからに違いない。

潜入警官や双子など、香港ノワールによくあるパターンは、実は日本映画が元だったりするが、赤木圭一郎の映画は特にそういった「香港映画度」が高い。本作でも双子をやっているのが楽しい。船乗りとか貧しい育ちとかの役が多いけれど、赤木圭一郎ってけっこうお坊ちゃんぽくて、あまりそういうふうには見えないですね。

他の見どころは、「やっぱりそうきたか」の三島雅夫と、(いい役だが)変すぎる近藤宏と(J先生大喜び)、それから待田京介中原早苗の同級生とおぼしき遊び仲間なので、それなりにお坊ちゃんの役だと思うが、全然似合ってません。郷硏治も出ているが、さえない役で残念でした。