シネマヴェーラ渋谷の特集「鈴木清順 再起動!」(公式)で、いちばん好きなアキラ映画、『関東無宿』を観る。21年ぶり二度め。
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そんな中原早苗はともかく、映画全体の雰囲気はストイックで渋い。小林旭はメイクバリバリだけど、着流し姿で超かっこいい。悶絶するほどかっこいい。最初から最後まで非常にストイックな雰囲気なのだけれど、いきなり伊藤弘子を押し倒す(ストイックじゃないじゃん)。
伊藤弘子は、『刺青一代』(id:xiaogang:20111214#p3)と同様、年下の男を夢中にさせるオトナの女の役。和服姿で大人の女の色香を漂わせているが、声がちょっとかわいい系なのがアンバランスでおもしろい。それほど美人とも思わないけれど、きっと鈴木清順の好みなのだろう。
アキラが伊藤弘子の家を訪ねるとき、渡し船で隅田川を渡っている。建築中と思われる佃大橋が見えるので、ここは佃の渡しと思われる。背後に勝鬨橋が見えるから、アキラの属する伊豆組があるのは佃島界隈なのだろう。伊豆組のまわりの下町っぽい風景や、かなり立派な伊藤弘子の家のたたずまいがいい。
ところで今回、『関東無宿』、『花と怒濤』(id:xiaogang:20111125#p5)、『俺たちの血が許さない』(id:xiaogang:20111213#p4)、『刺青一代』、『東京流れ者』(id:xiaogang:20111213#p3)と、仁侠映画的な要素をもつ清順映画をいろいろと観直した。そして気づいたのは、清順映画には「いい親分はいない」ということである。最初はいい親分だったり主人公に目をかけてかわいがってくれたりしても、どこかで必ず裏切ったり、自分の利益を優先したりする。清順映画において、義理や仁義というのは苦いものなのである。別に仁侠映画ややくざ映画を撮ったつもりはなかったのかもしれないが、東映仁侠映画の流行より微妙に先行していることを考えても、なかなか興味深い事実である。