実録 亞細亞とキネマと旅鴉

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『温泉文学論』(川村湊)[B1272]

『温泉文学論』読了。

温泉文学論 (新潮新書)

温泉文学論 (新潮新書)

紹介されている文学作品の中で、読んでいるのは『雪国』と『満韓ところどころ』だけ。映画化されたものを観ているのは、『金色夜叉』、『雪国』、『秋津温泉』、『大菩薩峠』。紹介されている温泉で行ったことがあるのは熱海、湯ヶ島のみ。

漱石で『満韓ところどころ』を取り上げているのは超渋いけれど、やっぱり『明暗』も取り上げてほしかった(川端康成だって二つ取り上げているからねえ)。これを読んで作品を読んでみたくなったのは『秋津温泉』。再読したくなったのは『雪国』。わかったことは『ゲンセンカン主人』の「ゲンセンカン」が下部温泉ではないこと。

ちょっと散漫な感じがするが、読んだり観たりしているものに関してはそれなりにおもしろかった(ぜんぜん読んだことのない作家で知らない温泉で…というのはさすがにきびしい)。「どういうわけか、漱石先生の温泉浴には、「若い女」が付きものである」(p. 103)とか。でももう少し堅いというか、ひとつの方法論で語られたものを期待したのだが。章末に、ブックガイドや温泉の紹介が載っているのはよかった。

この本とは直接関係ないけれど、その温泉が舞台になった映画や小説をできるだけ網羅した温泉図鑑を誰か出してくれないだろうか。わたしにとっては、温泉や宿を選ぶ最大の基準がそれなのだが、旅館のサイトなどを見ると、そんなことに全く言及していないところがけっこう多い。旅館の歴史や建築(の古さ)も重要なポイントだが、それにも言及していない旅館も多い。そんなことで旅館を選ぶ人は案外少ないのだろうか。