実録 亞細亞とキネマと旅鴉

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『日活アクション無頼帖』(山崎忠昭)[B1248]

『日活アクション無頼帖』読了。

日活アクション無頼帖

日活アクション無頼帖

鈴木清順の『野獣の青春[C1963-06](asin:B00005Q7NM)のシナリオライターである著者が、日活時代にした仕事、当時のシナリオライターの日常、他のシナリオライターや監督などについて語ったもの。1983年から1986年まで『月刊イメージフォーラム』に連載されたものであることは、最後の「編者あとがき」に書いてあるが、そういうことは冒頭に書いておいてもらいたい。この本は、まえがきとかそういったものが一切なく、いきなり「第一章 『野獣の青春』はこうして作られた!」が始まる。インパクトはあるかもしれないが、途中まで、ここに書かれている「今」というのは今のことだと思って読んでいた。そのうちにそうではないことや、これが連載ものであることに気づくが、基本的に「本というものは最初から順に読むものだ」と思っているので、なんとなくもやもやしながら最後まで真相がわからないまま読んだ。

内容は、おもしろいといえばすごくおもしろい、どうでもいいといえばどうでもいい話である。ひとことでいうと、著者が次々に新たな人物に出会っては反感を持つというお話。たとえば、長谷部安春とか神代辰巳とか。そのうちの半分くらいは、その後その才能を認めたり、親しくなったりしているが、あとの半分くらいはずっと憎んだり嫌ったりしていたようだ。日活アクションの舞台裏が覗けるという意味ではもちろん興味深い。

著者が原案または脚本を手がけた映画(ちゃんと映画になったもの)はわずか12本で、私はそのうち『危いことなら銭になる[C1962-36](中平康)と『野獣の青春』しか観ていない(赤木圭一郎主演の『俺の血が騒ぐ』(asin:B0000CBCBZ←さすが赤木圭一郎、ちゃんとDVDが出ている)が観たいですね)。出てくる人たちもそれほどなじみがなくて、興味深いのは中平康翁倩玉(ジュディ・オング)くらい。でも、けっこう翁倩玉(10代のころ)に入れこんでいるみたいだったのがおもしろい。また、中平康監督、翁倩玉主演で台湾との合作映画の企画があったというのが興味深かった。翁倩玉女流棋士(タイムリーだ)で、碁盤のセットを使ったミュージカル仕立てにするつもりだったということで、企画がつぶれたのはなんとも残念な話である。

とりあえず、読むと『野獣の青春』が観たくなる。映画とシナリオとの違いをリストアップした「第二六章 『野獣の青春』ふたたび」がおもしろい。これによれば、ことごとくヘンタイっぽい登場人物たちは、すべて鈴木清順監督によって塗り変えられたものだということだ。