実録 亞細亞とキネマと旅鴉

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『ムクシン(Mukhsin)』(Yasmin Ahmad)[C2006-18]

二本目は、やはりヤスミン・アハマド監督の『ムクシン』。今回の上映では、『ガブラ』が『グブラ』へ、『マクシン』が『ムクシン』へと、東京国際映画祭でのタイトルが変更になった。邦題を変えるくらいだから字幕も作り直したのかと思ったら、字幕は前のままなのでとても紛らわしい。

この映画は去年の東京国際映画祭でも観ていて(id:xiaogang:20061027#p4)二度目だが、やはり私は四作品の中でこれが一番好きだ。特に、オーキッドの家族がニーナ・シモンの『行かないで(Ne Me Quitte Pas)』のレコードをかけて踊っているのを、ムクシンが外からそっと見ているシーンが好き。全体にゆったりと撮られているが、もう2、3秒長くしたほうが余韻があるのに、というシーンがいくつかある。

四作品を通してみると、オーキッドは、ルックスも性格も一番いいムクシンと最初に出会って、恋とも気づかないままに彼をのがした後、どうもあまり男運がよくないようだ。彼女自身の見る目の問題もあって、ああいう理想的な家庭で愛情を一身に受けて育っても、男を見る目が育たないのはちょっと哀しい。

そのほかに感じたことなど。

  • オーキッドの部屋にある黒板の中文は、今回も二回目のが読めなくて悔しかった(見えにくいうえに私は簡体字が苦手なのだ)。
  • 『細い目』のジェイソンはふつうの体型だったように思うが、『ムクシン』では、その後のジェイソン(これはまあ本人が太っちゃったんだろう)も子供の頃のジェイソンも太めだった。
  • 最後に出てくる監督のおかあさんは、少なくとも現在は、映画でみるようなモダンな人ではなかった。聞くところによると日本人とのハーフらしい。

今日の二本は、アテネはイヤだとか時間が遅いとかゴネるJ先生を、有無を言わせず引っ張ってきたが、感想(LINK)を見るとどうやら気に入ったようである。それならそれで、ちゃんと「どうも連れてきてくれてありがとう」と書いておいてほしいものだ。

閉店ぎりぎりのスヰートポーヅに飛び込み、餃子を食べて帰る。