実録 亞細亞とキネマと旅鴉

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『月は上りぬ』[C1955-12]の荒池・東大寺・若草山

舞台は奈良、向こうに見える五重塔が、池の水に映っている。それはふつう、猿沢池興福寺五重塔だ。だから『月は上りぬ』の終盤(だったと思う)にあるそのショットも、猿沢池と信じて疑わなかった。ところが前回チェックしに行くと、どうみても塔の向きがおかしかった。昨日再び猿沢池に行ってみたが、やはり塔の向きがおかしい。「別の池ではないか」というあたりまえのことに今さら思い至り、奈良ホテルそばの荒池に来てみる。そこには映画とほとんど変わらない風景があった(写真)。

今日はほかにも、『月は上りぬ』に出てくるところを探して、東大寺若草山を歩き回った。それらはすでに、私のサイトの『月は上りぬ』ロケ地ページ(LINK)に載せているものだが、そこには自分の目で確認していない場所も含まれている。前回の旅行では見つけられなくて、そのあと出張で再訪したJ先生が見つけて撮ってきてくれたところだ(前述したように、それらが『日本映画を歩く - ロケ地を訪ねて』[B209](asin:4122047277)に書かかれていたことはあとで気づいた)。


一番行きたかったのは龍松院(写真)。安井昌二が下宿していた禅寺だ。映画には内部や庭も出てくるが、残念ながら非公開。庭の手入れか何かが行われていたので、門からそっと覗いて、映画に出てくる玄関はあれかと想像したりした。山根寿子、杉葉子北原三枝の三姉妹の家は、現在整肢園があるあたりに建てられたオープンセットらしい。この家からは南大門や地蔵院が見えていたが、もはや同じアングルを再現するのは難しい。

若草山は、安井昌二と彼を訪ねて奈良に来た三島耕が旧交をあたためるところ。前回は外から見ただけだったので、今回は登ってみた。といっても途中に柵があり、それ以上は行けない。映画では柵はないが、ふたりがいた場所もこのあたりだったと思われる。

小さな変化はたくさんあるが、『月は上りぬ』の奈良はまだまだ残っていた。