実録 亞細亞とキネマと旅鴉

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『叛乱』(佐分利信)[C1954-23]

京橋へ移動し、ドトールで読書をしてからフィルムセンターへ『叛乱』(goo映画)を観に行く。特集は同じく「シリーズ 日本の撮影監督(2)」(公式)で、今日のキャメラマンは小原譲治。先日はすいていたので油断して開場直前に行くと、階段の下までの長い列。余裕で座れたけれど、ほぼ満席だった。しかもじいさんばっかり、男ばっかり。二・二六ってそういうもの?

この映画を観ようと思ったのは、監督が佐分利信だから。『愛情の決算』[C1956-20]しか観ていないので佐分利信の監督としての力量は不明だが、『愛情の決算』はなかなかいい映画だった。今回は本人が出演していないのが残念。

二・二六事件に関する映画は『日本暗殺秘録』[C1969-22]くらいしか観ていないし、二・二六事件に関する知識もそれほどないし、あまり興味もないし、もちろん共感もない。事件まではやたらと抽象的なスローガンが文字どおり叫ばれているし、事件後は自決するのしないのと騒いでいるし、けっこうげんなりして観ていたのだが、終盤つかまったあとは面白かった。刑務所は独房だが、通路の両側に並んでいて自由に話ができる。刑務所での日常生活が描かれ、5人ずつ順番に死刑が執行される様子が繰り返し描かれる。『悲情城市[C1989-13]や『好男好女』[C1995-11]を連想させる刑務所の通路や、刑場へ向かうところのロングショットが印象的。最後に「天皇陛下万歳」と言うかどうかみんなで相談するところや、「私は「天皇陛下万歳」はやりません」という西田税(佐々木孝丸)の台詞で終わるラストもおもしろかった。新東宝の映画で「日本では革命は起こらない」という台詞が何度も聞かれるのが、ちょっと意味深な気もする。

登場人物もほとんど知らないのに、演じている俳優がまたわからない。新東宝だし、冒頭にクレジットがなかったので、主だった人物でわかったのは山形勲と安部徹だけ。こういうのはけっこうしんどい。丹波哲郎鶴田浩二が出ていたのがサプライズだったが、ふたりとも観ているときはいまひとつ確信がもてなかった。丹波哲郎はまだ出たてのころで、冒頭でアップになったので「タンバか?」と思ったが、声や話し方がいまひとつタンバっぽくなかった。鶴田浩二は特別出演で、話し方も鶴田浩二だったが、1954年の映画なのに60年代後半の鶴田浩二に見えた。結局ふたりとも本物だったのだが。

Meal MUJIで晩ごはんを食べて帰る。