同時上映は、同じく小沢茂弘監督の『博徒対テキ屋』。テキトーなタイトルがついているが、鶴田浩二が博徒なだけで、テキ屋対テキ屋のお話。
この映画は、まずなんといっても出演者が豪華。いいほうの親分が片岡千恵蔵、悪いほうの親分が近衛十四郎。ふつうのヤクザ映画では見られないこの配役に圧倒される。どうみても主演は鶴田浩二なのに、クレジットのトップは片岡千恵蔵。
鶴田浩二はわけあって家を出た千恵蔵の長男。代わりに組を支え、いずれは跡目にと言われているのが大木実。そして地元警察の警部補が丹波哲郎。この3人が幼なじみという設定。警察で3人が一同に会し、タンバが「俺たちは幼なじみじゃないか」と言うところで、今後の展開をあれこれ期待してしまうが、この3人がいまひとつ期待どおりには絡んでくれなくて、残念でした。
浅草へのデパートの進出に絡むテキ屋の争いを描いているが、このデパートが「杉屋」というのがかなりあからさまな名前。しかし、資本家の描き方は甘すぎ。とはいえ、昭和のはじめに、デパートができたからといって露天商が生活に困るのかどうかは疑問である。