実録 亞細亞とキネマと旅鴉

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『ならず者』(石井輝男)(DVD-R)[C1964-31]

9月24日、たいへん残念なことに丹波哲郎が亡くなった。丹波哲郎の代表作といえば、主演ではないが、やはり『東京ギャング対香港ギャング』と『ならず者』だろう(いずれも1964年、東映石井輝男監督)。というわけで今日は、丹波哲郎追悼大会と称して『ならず者』を観る。

『ならず者』といえば、呉宇森(ジョン・ウー)監督の『狼/男たちの挽歌 最終章』(asin:B00013F5G0)の元ネタとして有名だ。『狼』では、殺し屋・周潤發(チョウ・ユンファ)を追う刑事を李修賢(ダニー・リー)が演じている。『ならず者』でその役をやっているのは杉浦直樹だが、あまりに影が薄い(髪はまだ薄くなかった)。なので李修賢の役は、殺し屋・高倉健を助けるボス・丹波哲郎の役どころもかなり取り入れていると思われる。だけど李修賢では丹波に到底かなわない。

『東京ギャング対香港ギャング』の丹波はもう「タンバはタンバである」という感じですばらしいが、『ならず者』ではタンバらしさは影をひそめ、かなり渋くてかっこいい役である(なんだか疲れた顔をしているのが気になるが)。特にいいのは、ピアノで葬送行進曲を爪弾きながら三原葉子を殺すシーン。北京語の発音(特に声調)がちゃんとしていたらもっとよかったのだけれど(特に三原葉子のが気になる)。健さんと一緒に追っ手から逃げるシーンも、澳門(マカオ)の路地の魅力と相まってとてもよい。

丹波哲郎以外にも、南田洋子三原葉子の女性陣もいいし、悪役・安部徹の死に方もいいし、謎のギャンブラー役でワンシーンだけ出てくる江原真二郎はとっても変だし(J先生はこのシーンがお気に入りらしい)、なかなか見どころの多い映画である。ちなみに、『欲望の翼』(王家衛)の梁朝偉(トニー・レオン)は、この江原真二郎がモデルだという説もある。10月5日(木)に新文芸坐で上映されるようなので、観ていない方はぜひご覧ください。

ところで先日気づいたのだが、『東京ギャング対香港ギャング』での丹波の役名は「毛」、『ならず者』では「蒋」。国共合作か? ちなみに『ならず者』では安部徹が「毛」だが、丹波とは対決しないので国共内戦はない。