実録 亞細亞とキネマと旅鴉

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『アコード・ファイナル』

今日は有給休暇。まず、東京フィルメックスの『アコード・ファイナル』に行く。今回観る唯一の「映画大国スイス」特集のもの。私はこれまでダグラス・サークの映画を観たことがなく(『人生の幻影』は二回も観たのに)、このことは私の映画人生の汚点のひとつだった。この映画はイグナツィ・ローゼンクランツとの共同監督で、ダグラス・サークはノン・クレジットだが、ともあれ観ることができてめでたい。

映画はスイスを舞台に、アメリカ人の著名なヴァイオリニストが、音楽学校の入口を10番目に入った女性と結婚することを賭けるというもの。マネキンに化けて国境を通過したり、ラジオ放送の途中でレコードから生演奏に変わったり、主人公が偽名で入った音楽学校で本人のコンサートが開かれたりといった、偽者と本物をモチーフに繰り広げられるコメディである。軽快で無駄がなくて、文句なしに楽しめる映画だった。恋もあり、正義もあって、娯楽映画の王道という感じだ。

次はダグラス・サーク単独の、そしてやっぱりメロドラマが観たい。