実録 亞細亞とキネマと旅鴉

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『悲しみは空の彼方に(Imitation of Life)』(Douglas Sirk)[C1958-29]

晩ごはんをちゃんと食べたいという理由で『天が許し給うすべて』を買わなかったのを少し後悔している。まあいまさらしかたがないので、お茶を飲んだり買い物をしたりひげちょう丼を食べたりする。ダグラス・サーク三本めは『悲しみは空の彼方に』(映画生活/goo映画)。“Imitation of Life”というなかなか秀逸なタイトルが、なんで『悲しみは空の彼方に』になっちゃうの?

ダグラス・サーク コレクション 2 (初回限定生産) [DVD]

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女優のラナ・ターナー(Lana Turner)とその娘のサンドラ・ディー(Sandra Dee)、ラナ・ターナーの家で住み込みで働く黒人のファニタ・ムーア(Juanita Moore)と混血の娘のスーザン・コーナー(Susan Kohner)という二組の親子と、ラナ・ターナーの恋人、ジョン・ギャビン(John Gavin)の10年(の最初と最後)を描いた大メロドラマ。

オープニングは真夏の由比ヶ浜海岸。というのはウソだけど、「なんか最近見た光景」と一瞬思ったのは事実である。実際はニューヨークのコニー・アイランド(鎌倉には観覧車はないな)。ここでいきなり5人が一堂に会する。つまりラナ・ターナーは、その後大事な伴侶となる二人、ジョン・ギャビンとファニタ・ムーアに、同じ日に同じ場所で会ってしまうのである。まさしくメロドラマ。この映画で不吉な役割を担うのは、ぱっと見が白人であるため自分を白人だと思い込もうとして黒人を毛嫌いするスーザン・コーナー。子供時代の冒頭からその激しさは突出していて、それはエスカレートしながら物語を動かしていく。

ラナ・ターナーが女優として成功すると、舞台は10年後に移る。こういった時間経過をどう表すかが映画の出来を左右することも多いが、ラナ・ターナーが主演した舞台の看板で10年の経過を表したところはなかなかよかった。子供たち以外、10年経ってもほとんど変わっていなかったのがすごい。

家族の話のなかに、夢の追求と現実、仕事と家庭、親と子、白人と黒人といった様々な問題が織り込まれていて、これまた無駄がなくてよくできている。ただし125分もあってちょっと大作すぎるかも。前の二作とはキャストも変わり、個人的には全然馴染みがなかった。いかにも善人っぽいファニタ・ムーアの演技がちょっと過剰に感じたのと、サンドラ・ディーがあまりにパキパキしていて魅力が感じられないのが気になった。

今日観たのは全部、どちらかというと家族メロドラマだったので、『心のともしび』とか『天が許し給うすべて』とか、男女のメロドラマも観たい。しかたがないからDVD-BOXでも買うか。