実録 亞細亞とキネマと旅鴉

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台湾旅行第二日:台北→大溪→台北

5時すぎに起きると、まだ暗い空に稲妻が光るのが見えた。今日は台灣鐵路宜蘭線に乗って大溪(宜蘭縣頭城鎮)へ行く予定だが、お天気が心配だ。大溪車站は『愛が訪れる時(當愛來的時候)』のロケ地。ヒロインの來春(李亦捷)が、逃げたボーイフレンド・牟宗福(吳慷仁)の実家を訪ねるシーンで出てくる駅だ。海の見える駅のホームは『悲情城市』ロケ地の大里車站かと思われたが、実はその隣の大溪らしい。

大溪は區間車(各駅停車)しか止まらない駅で、區間車で行くと2時間弱。福隆まで自強號を使ったり、宜蘭から引き返したり、どんな方法を使ってもかかる時間はあまり変わらないようなので、區間車で行くことにする。捷運の地下街で朝ごはんのパンを買って7:35発の電車に乗り込むと、「瑞芳へ行くにはこれでいいのかしら?」などと言いながら、日本人の家族連れが乗ってきた。「そういうことはわたしに聞きなさい、えっへん」と思ったのに、おずおずと英語で話しかけられた隣の台湾人女子が「日本語だいじょうぶです」と言いだして、わたしの出番はなくなった。きっと九份に行くのだろう。

區間車の車両は通勤電車タイプだけれど、懐かしい緑色のシート(↓左写真)。そこそこ混んでいたのにどんどん降りていって、気がついたら隣席のおばさんと、3km先まで聞こえるような声でケータイで話しているおばさんと、わたしたちだけになっていた。やがて龜山島が見えてきて(↓右写真)、激しく気分が高揚する。あと少しのところで長い待ち合わせがあり、定刻の9:29より10分くらい遅れて大溪に到着。


大溪車站は、なんの変哲もない小さな駅(↓左写真)。雨の心配などよそに、真っ青な空が広がり、夏の日差しが降りそそいでいる。ほぼ海岸線に沿って走る北部濱海公路を、大溪漁港方面へ歩く。ところどころ集落があり、たまにはお店もあり、サーファーも住んでいて、渋い橋(↓右写真)や廟もある。大溪はそんなところ。

駅が大溪なら牟宗福の実家も大溪だろうということで、実家があった集落などを探してみる。來春が阿傑(高盟傑)と一緒に実家を訪ねた帰り、女の子を連れた牟宗福と遭遇する遊歩道みたいなところと似た感じの場所があったけれど(↓左写真)、東屋の形も風景もやはり違っている。來春と阿傑が歩いていた方向から考えて駅の北側へ来たけれど、実は反対側だったのかもしれない。しかし今日はもう時間がない。漁港の入口あたりで引き返し、駅を少し過ぎたところにある福徳廟へ(↓右写真)。これは駅のホームのシーン(後述)で見えていた廟だ。

早めに駅に戻り、ホームのロケ地をチェック。いまひとつ不首尾に終わった大溪訪問だけど、ここだけは確実に映画に出てきたところ。來春が牟宗福の実家を訪ねるシーンは2回あり、1回めは大媽(呂雪鳳)と、2回めは阿傑とだが、どちらもここが出てくる。↓左写真は1回めの訪問の帰りのショットで、ふたりがちょっと離れて立っていたホームは、実は台北に帰る方向ではない。

11:25の區間車で台北へ向かう。隣の大里車站は、『悲情城市』では大溪と同じような雰囲気の駅なのだが、海側にホームとコンクリートの塀ができ、かなり風情がなくなっていた(↑右写真)。

ちょうど昼ごはんの時間を迎えた車内。近くのおばさんから強烈な揚げ物臭が漂っていたが、タブレットPCで動画を見ながらカレー弁当を食べるおねえちゃんが現れて、揚げ物臭を一掃した。カレー臭の圧倒的な勝利に思われたこの戦いは、おねえちゃんがカレーを食べ終えたとたん、ふたたび揚げ物臭がわたしたちの空っぽの胃袋を襲って最終的な勝利をおさめた。定刻の13:10ごろ台北に到着。