実録 亞細亞とキネマと旅鴉

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『有楽町で逢いましょう』(島耕二)[C1958-35]

神保町シアターの特集「川口家の人々」(公式)で、島耕二監督の『有楽町で逢いましょう』を観る。

有楽町で逢いましょう」は、1957年に開店した有楽町そごうのキャッチフレーズで、同名の曲が作られ、映画も作られたらしい。そんなわけで、これはフランク永井の『有楽町で逢いましょう』を主題歌とし、有楽町そごうを舞台にした映画。本篇とは関係ない、『有楽町で逢いましょう』を歌うフランク永井の映像で始まる。『有楽町で逢いましょう』はとてもいい歌だし、フランク永井の声も甘くていいけれど、顔は別である。主題歌を流すだけで、顔は出さないほうがいいのに。

映画は、仕事熱心で婚期を逃しかけた京マチ子菅原謙二、それぞれの弟妹で若い学生の川口浩野添ひとみ、この二組が知り合ってカップルになるまでを描いたラブコメ。それなりにおもしろいけれど、流行りのデパートやファッション業界が出てくる話だし、大規模にタイアップしているのだから、もう少し洗練された映画にできなかったのかと思う。全体的には比較的シリアスななかにベタなギャグが散りばめられていて、特に山茶花究がからんだギャグが寒い。ちゃんと「あなたを待てば雨が降る〜♪」という歌詞に合わせたシーンがあったりするのはうれしいのだけれど。

有楽町そごうにはほとんど行かないままに閉店してしまった。この映画に出てくるのは、パリ帰りのデザイナーのファッション・ショーが開かれたりする、華やかなりしころのそごう。今ごろになってこんな映画を観ると、栄枯盛衰の無常を感じる。入口の天使の像や何度も出てくる2階のティールームも、今はないと思うと寂しい。