神保町シアターの特集「川口家の人々」(公式)で、吉村公三郎監督の『婚期』を観る。
- 出版社/メーカー: 角川ヘラルド映画
- 発売日: 2007/04/27
- メディア: DVD
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全般的に『婚期』のほうが辛辣で容赦ない。長男の嫁の京マチ子は、夫に冷たくされ、小姑二人にいじめられ、大家族の家事労働が重くのしかかり、スカートから下着を出すなど、女として終わっている。次女の若尾文子は、容姿端麗で教養もあるのに男がいなくて、いい縁談も来ない。『春らんまん』は、そのあたりをもう少しソフトにしてしまった結果、これらの役を演じる新珠三千代と司葉子の演技がぱっとせず、全体的に生ぬるい感じになってしまっている。
『婚期』の最大の功労者は若尾ちゃん。男もなく、独立するだけの稼ぎもない「29歳の崖っぷち」状態を、とてもキレのよい演技で魅せている。年齢や結婚関係の言葉に対する敏感さとか、縁談が来てウキウキするところとか、野添ひとみのボーイフレンドに興味津々なところとか、30歳になったら後妻でもいいと言いながらハゲはイヤとか、キツさとかわいらしさとおばさんになりかけのところの混ざり具合も絶妙で、いちいち楽しませてもらった。着物にメガネも最高。
でも長男の役は、船越英二だと本当に嫌なやつに見えたので、宝田明のほうが軽くてよかった。しかし、長男夫婦の不仲の経緯は、どちらもほぼ同じだけれどどうも無理があると思う。もう少しうまい設定を考えられなかったのだろうか。