実録 亞細亞とキネマと旅鴉

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『恋人たちの時刻』(澤井信一郎)[C1987-92]

神保町シアターの特集「監督と女優とエロスの風景」(公式)で、澤井信一郎監督の『恋人たちの時刻』を観る。

恋人たちの時刻 デジタル・リマスター版 [DVD]

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原作は寺久保友哉の『翳の女』(未読)ということで、いかにも小説が原作という感じのストーリー。主演の野村宏伸河合美智子が、大人になりかけの男女の複雑な心理状態をなかなか好演していると思う。野村宏伸の台詞まわしはちょっと危なっかしいけれども。野村宏伸はやりたい盛りの青年だし、河合美智子は少し前まで誰とでも寝る女だったという設定だけど、ふたりともすごく清潔感があるのがいい。河合美智子の脱ぎっぷりも潔く、決して巨乳ではないが、形のいいおっぱいがぷりっぷりなのがうらやましい(20歳くらいだから当然だけど)。

どこか荒涼とした風景とひんやりした空気感が、観終わってからもずっと心に残る映画。舞台は札幌、小樽など北海道で、季節は初秋から秋が深まっていく時期だと思うが、いかにも秋という風景は出てこず、北海道の秋は内地の秋とは空気が違うんだろうかとも思う。冒頭の海、海猫の餌付けをするところ、野村宏伸が訪ねる標津などの海のシーンが、特別な風景ではないのに、寒々しく荒涼とした寂寥感をたたえている。

エンディングで流れる大貫妙子による主題歌は以前から好きな曲。久石譲による音楽もめずらしくけっこうよかった(よく知らないけれど、音楽つけすぎでうるさいというイメージがある)。海猫の餌付けのシーンで、「東京へはもう何度も行きましたね♪」という歌(『東京』)の一部が繰り返し流れているのも印象深いが、あれは実際に流れていたのだろうか。

肩パットやぶかぶかずるずるの80年代ファッションは、やはり見ていてつらいものがある。人生の転機で出会うオトナの男が高橋悦史なのもちょっとあんまりだと思う(生理的に受けつけがたい)。