実録 亞細亞とキネマと旅鴉

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『ギリギリの女たち』(小林政広)[C2011-13]

TOHOシネマズ六本木ヒルズで、小林政広監督の『ギリギリの女たち』(東京国際映画祭)を観る。第24回東京国際映画祭の特別上映部門・TIFF ARIGATOプロジェクト 震災を越えての一本。

蝉が鳴いている季節の気仙沼市唐桑町を舞台に、15年ぶりに再会した渡辺真起子中村優子藤真美穂の三姉妹が織りなす愛憎劇。三姉妹の実家のロケ地は、小林監督自身の家であるらしい。冒頭、渡辺真起子が実家に戻ってきて、家中を点検しながら歩き回るシーンは、長いこと人が住んでいない家の雰囲気と被害の程度とを同時に見せていてすばらしい。震災を直接扱っているわけではなく、あくまでも背景として描かれているが、被害の様子や瓦礫などをさりげなく写しながら、三姉妹の心の傷と震災の大きさを呼応させている。

ただ、会話が中心の演劇的な作品だったのが、わたしにはちょっと苦手だった。長回しは好きなのだが、冒頭の25分だか35分だかの長回しは、3人が再会したあと会話中心に進み、演劇っぽさを高めている。久しぶりに会ったのに最初から感情を吐露すること、意味のある会話ばかりで、どうでもいいような内容がほとんどないこと、言葉づかいやしゃべり方が演劇的あるいは小説的、すなわち実際には存在しないようなものであることなどが苦手な点。また、この三姉妹はみな、ありふれたものではない人生を生きているのに、語られるその内容がこちらの想像を全く超えないため、すごく凡庸に見えてしまう。だから、語られていない部分をもっと知りたいという気にさせてくれない、つまり彼女たちに興味がもてない。

とはいえ、冒頭の長い張りつめた芝居のあとで、中村優子藤真美穂と共にカメラが家の外に出たときの途方もない開放感は忘れがたいし、庭にテーブルを持ち出してカレーを食べたりするところもいい。

上映前に、渡辺真起子中村優子藤真美穂の舞台挨拶があった。