実録 亞細亞とキネマと旅鴉

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『片腕ドラゴン(獨臂拳王)』(王羽)[C1972-26]

シネマート六本木の特集「香港電影天堂SPECIAL」(公式)で、王羽(ジミー・ウォング)監督の『片腕ドラゴン』を観る。

片腕ドラゴン デジタル・リマスター版 [DVD]

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物語は、悪徳道場に師匠や仲間を殺され、右腕を失った王羽が、鋼鉄の左腕を手に入れて復讐するというもの。ポイントはふたつあって、ひとつは王羽が鋼鉄の左腕を手に入れるところ。まず手の神経を焼き切らなければならないのだが、あまりの熱さに顔を歪める王羽のあまりの熱演ぶりに、ついつい笑ってしまったのであった。

もうひとつのポイントは、王羽と悪徳道場が雇った外国人助っ人との闘い。助っ人は、日本、沖縄、韓国、チベット、インド、タイから集められていて、そのアクションのバリエーションや創意工夫に富んだ技が見どころ。しかし、いちいち順番にみんなが出てきてだんだん飽きるし、彼らは助っ人で王羽と闘うモチベーションも乏しいため、表層的な技の目新しさだけでもたせるのはちょっとつらい。

助っ人たちのモチベーションを含め、やはりドラマ部分が弱すぎると思う。通りいっぺんの復讐物語が設定されているだけで、友情やロマンスや時代背景のグッとくる部分がなさすぎる。

王羽はあまり見たことがないので顔を忘れていたが、王羽=黒社会(映画の中での話ではなく)というイメージは強烈にあったので、ヒーローやボスというよりはチンピラっぽい顔にがっかりする。しかも武術家なのに七三分け。華がない。なさすぎる。思わず「地味・ウォング」とオヤジギャグをつぶやいてしまう。

ところで、広東語の“王(wong)”が「ウォング」と表記されているジミー・ウォングは、‘n’と‘ng’の発音の違いを「ン」と「ング」とで書き分けたい派の最後の砦である。かっこわるいが、書き分けるメリットも大きいと思うけれど、最近話題の中国語音節表記ガイドライン(LINK)でも採用されておらず、かなり分が悪いようだ(北京語の話と広東語の話をいっしょにしてすみません)。