実録 亞細亞とキネマと旅鴉

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『オルグヤ、オルグヤ…(敖魯古雅…敖魯古雅…)』(顧桃)[C2007-51]

昼ごはんにしゃぶしゃぶを食べてから、今日もまたポレポレ東中野(公式)へ。中国インディペンデント映画祭2009(公式)で観る最後の作品は、顧桃(グー・タオ)監督の『オルグヤ、オルグヤ…』。トナカイの狩猟を禁止され、大興安嶺から町へ移住させられた鄂温克(エヴェンキ)族を描いたドキュメンタリー。柳霞(リュウ・シア)、維佳(ウェイ・ジア)という姉弟を中心に、以前住んでいた森に再び戻り、昔ながらの生活を続けようとする人々を、アルコールに依存せざるを得ない、狩猟生活を奪われた喪失感とともに描いている。

移住先は、內蒙古自治區呼倫貝爾(フルンボイル/ホロンバイル)市にある根河市敖魯古雅鄂温克民族鄉と思われ、映画の冒頭で根河車站が出てくる。

より大きな地図で 映画に登場する中国 を表示
移住の経緯などはあまり語られないが、ココ(LINK)とかココ(LINK)に関連ニュースがある。ここに写真が載っているような移民村の赤い屋根の住居は、映画の中にも親戚の家として登場している。

この映画の魅力は、なんといっても姉の柳霞。見た目はとっくに50歳を越しているように見えるが、まだ40代前半。わたしとしては40代の人をおばさんとは呼びたくないが、彼女はもう、強烈なおばちゃんとしか言いようがない。冒頭、列車の中でにこやかに談笑していたかと思ったら突然通りがかりの役人に罵声を浴びせ、しかも「役人はすべからく罵倒すべし」とのポリシーを熱く語るさまに、隣り合わせた漢人女性も引きまくり。酔っぱらって一人で列車を降りられないので、ホームにいた警官に荷物を持っていてくれるように頼むが、なんとかホームに降り立った彼女は、「返せ」と叫びながら荷物を引ったくって去る。「歌わずにはいられない♪」という歌を気持ちよさそうに歌い、踊る。おもしろすぎる。きわめつけは、親戚宅での姉弟の流血の抗争。突然、椅子をつかんで弟に振り下ろす柳霞。倒れた維佳の派手な流血を、鮮やかに映し出すカメラ。すごすぎる。

しかし、柳霞のキャラクターがおもしろすぎるため、彼女が出ていない場面では、がっかりしてテンションが下がってしまうという問題点があった。

これで今年の映画は終わり。中国インディペンデント映画祭2009では、『武松の一撃』と『新鋭監督短編集』が観られなかった(だって、うまく観られるようにプログラムが組まれていないんだもん)が、充実した内容で満足した。来年もぜひぜひ開催していただきたい。