実録 亞細亞とキネマと旅鴉

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『台北歴史散歩 - 日本統治の足跡と近現代史を探る』(邸景一、荻野純一、柳木昭信、伊東ひさし)[B1311]

台北歴史散歩 - 日本統治の足跡と近現代史を探る』読了。

旅名人ブックス110 台北歴史散歩

旅名人ブックス110 台北歴史散歩

旅名人ブックスの台湾本二冊め。今度は、場所が台北、テーマが歴史散歩と絞られているので、前のよりは読みごたえがある。しかし、そのほとんどは、取材よりも(おそらく台湾の)文献から得られたものと思われるが、参考文献が一切ないのは犯罪的である。

日本が台湾を植民地化したときに、城壁を壊したり廟を移転させたりしたことについては、ほとんど非難しないばかりか「先見の明」とかなんとか書き、(別に蒋介石の肩をもつわけではないが)戦後蒋介石が日本の植民地遺産を壊したことは非難するという偏った姿勢がいやだ。日本が植民地や占領地に作った建築にはいいものがたくさんあり、それらは日本建築史に正当に位置づけられているとはいえず、正当に位置づけられ、評価されるべきだとは思う。しかしだからといって、根拠もなく、べたべた褒めればいいというものではない。

前ほど気にならなくなったが、文体はあいかわらず。たとえば、華山創意文化園区の説明。第一文が「不思議な空間であった」(p. 199)。もはやうなるしかない。写真のセンスの悪さも同じで、なぜかほとんどの写真が暗い。本文を読むかぎり、取材もけっこう駆け足っぽい。せっかくここまで詳しく書かれていて、写真もふんだんに使われているのだから、もっとじっくり、きちんとした本をつくればいいのに、なんかもったいないなあと思う。