実録 亞細亞とキネマと旅鴉

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『ビバ! 監督人生!!(情非得巳之生存之道)』(鈕承澤)[C2007-36]

今週はまた「台湾シネマ・コレクション2008」で、朝からシネマート六本木へ行く。まず1本めは、鈕承澤(ニウ・チェンザー)監督の『ビバ! 監督人生!!』(公式ブログ)。『風櫃の少年』[C1983-33]に主演していた鈕承澤(発音しにくい名前なので、わたしは「風櫃の少年」と呼んでいる)が大人になって、『ミレニアム・マンボ』[C2001-10]にちらっと出ていたときはすごく驚いた。しかし彼はトレンディドラマの監督になっていて、出演もしていた『求婚事務所』などで現在の顔もすっかりおなじみになった(基本的にはあまり変わっていない)。『ビバ! 監督人生!!』は、その鈕承澤の初監督作品である。

映画は、腐敗した社会を告発するモキュメンタリー映画を撮ろうとしている監督の資金集めの苦労や私生活を描いたもの。苦労のすえにテーマを変更し、自分たち自身のことを映画にしようと決意するまでが描かれており、その結果撮られたのがこの映画、と思わせる趣向。実体験に基づくと思われるエピソードや、出演者本人そのままの設定などが多数盛り込まれて一見ドキュドラマのように見せているが、実はフィクションなわけで、そのあたりの混ざり具合がおもしろい。

主演はもちろん鈕承澤本人。映画のなかで、主演を要請された屈中恆が、「主役はあんたでしょう」みたいなことを言って断るのが笑えた。本人役で出ている人も多いリアルな出演者のなかで、最もフィクションなのは鈕承澤の恋人が張鈞簶(チャン・チュンニン)だというところ。年も若いし、いかにも監督の願望という感じだが、家で論文を書いていたり、ドラマの中で言承旭(ジェリー・イェン)とキスしていたり、張鈞簶本人を思わせる設定が多数盛り込まれていて、本当らしく見せているのがいやらしいというか、ほほえましいというか。

いろんな人が出ているのもおもしろかった。『Jam』[C1998-03]に出ていた蔡信弘が実名のスタッフ役で出ていて、クレジットを見ると本当にスタッフ。『フラット・タイヤ(破輪胎)』[C1999-05]に出ていた丁寧も本人役で出演。あと、著名人や街の人へのインタビューが何度か挿入されていて、そこに小S(徐熙娣)なんかも出ている。

台湾でこういうタイプの映画はありそうでなかったので新鮮だった。でも最初にアイデア勝負な映画でそれなりに当ててしまうと、次回作がけっこうたいへんな気がする。