実録 亞細亞とキネマと旅鴉

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『翼に賭ける命(The Tarnished Angels)』(Douglas Sirk)[C1957-32]

映画祭ディレクターの挨拶が長かったせいか、昼ごはんの時間がほとんどなく、同じビルのスタバでサンドイッチを詰め込む。ダグラス・サーク二本めは『翼に賭ける命』(映画生活/goo映画)。モノクロ、シネスコ

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飛行機レースの話で、飛行機レースのパイロットがロバート・スタック(Robert Stack)、その妻がドロシー・マローン(Dorothy Malone)、彼らを取材する記者がロック・ハドソン(Rock Hudson)。『風と共に散る』とほぼ同じキャストである。

第二次世界大戦の英雄だったロバート・スタックは、今は飛行機レースのパイロットだが、見た目の華やかさや死と隣り合わせの危険(自動車レースなどの比ではない)のわりには報酬も小さく、旅芸人のような暮らしをしている。戦争から10年経ち、かつての英雄を見る目が確実に変化しているさまがなにげにリアルである。なかば忘れられた存在の彼は、最初からレースで命を落とすように運命づけられていて、映画はとにかくそこに向かって動いていき、全体をやりきれない空気が覆っている。さらに、死と向き合うために家族を顧みない彼に対し、美貌の妻には常に男の噂がつきまとっていて、これが冒頭から映画に暗い影を落としている。そして、レースの前に妻への愛を初めて口にしたロバート・スタックは、まるで「最後の仕事」に向かった殺し屋が必ず殺されるように、レースで命を落とすことになる。

3人ともこれまで特に気にしたことのない俳優で、ルックス的にも別に好みではない。ところが『風と共に散る』を観ただけですっかり見る目が変わり、「安心できるキャスト」と感じてしまう。特にドロシー・マローンがよかった。顔が個性的というか作りが大ざっぱな感じなので、カラーで派手なドレスよりもモノクロで地味な服のほうが美しく感じられたし、報われない感じがにじみ出ていてよかった。

ラストショットをはじめ、市松模様パイロンがかっこいい。タンタンのロケットを連想させるので、すっかり赤と白の市松模様だと思って観ていたが、ほんとうは何色なのだろう?