実録 亞細亞とキネマと旅鴉

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『鎌倉スーベニイル手帖 - ぼくの伯父さんのお土産散歩ブック』(沼田元氣)[B1222]

『鎌倉スーベニイル手帖 - ぼくの伯父さんのお土産散歩ブック』読了。

鎌倉スーベニイル手帖―ぼくの伯父さんのお土産散歩ブック

鎌倉スーベニイル手帖―ぼくの伯父さんのお土産散歩ブック

老舗など、レトロな雰囲気をもつ場所や物を中心に紹介した鎌倉・江ノ島・葉山のガイドブック。そういった雰囲気のものだけを選んでいるのか、著者の好みで選んだものがたまたまそういう傾向をもっているのか、そのあたりのところはよくわからない。ロミユニなど、レトロでも老舗でもないところも紛れ込んでいるし、「スーベニイル手帖」なのに、おみやげだけではなく飲食店なども載っている。

本のデザインがよく、鎌倉彫の寸松堂や柴崎牛乳本店の建物が載っていたり、OKASHI0467のケーキの写真がいくつも載っていたり、イワタのメニューが値段つきで載っていたりする細かさがツボにはまる。旅や散歩や食べ歩きが好きな人は、誰しも「自分の好きなところを並べたガイドブックを作りたい」と思ったことがあるだろう。この本はそんな欲望をとてつもなく駆りたてる。ただ、載っている場所はそれほど多くないので、実用的なガイドブックとしては物足りなさも感じ(そんなところがまた、自分のガイドブックを作りたい欲望を駆りたてるのだが)、個人的には、江ノ島や葉山はとりあえずおいといて全部鎌倉でいってもらいたかった。

ガイドブックには、大きく分けて網羅系とセレクト系があるが、この本はセレクト系の極みともいえるものだ。この本のように、セレクト系にはセンスのよいものが多いが、網羅系にはひどいものが多い。黄金週に奈良へ行ったとき、主に使ったのは『歩きたくなる奈良地図本』(asin:4874352340)というガイドブックで、これは網羅系とセレクト系の中間ぐらいの、デザインもまあまあのものだった。しかし(「地図本」のわりに)地図が貧弱なので、網羅系も買っておこうかと、「る」とか「ま」とかがつくムックタイプのものを手にとってはみたが、表紙のあまりの醜悪さにおののいて、すぐに棚に戻してしまった。この手の醜悪なデザインは、こういうもののほうが売れるというマーケティングに基づいているのか、まともなデザイナーを雇えなかったからなのか、そもそもデザイナーを使っていないからなのか、あるいは単なる好みの多様性の問題なのか…。ガイドブックに限らずいたるところに溢れている醜悪なデザインを目にするたびに、そのへんのところが気になってしかたがない。