実録 亞細亞とキネマと旅鴉

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湯河原旅行往路:鎌倉→湯河原

最近、しばらくすると温泉に行きたくなるという贅沢な癖がついてきた。今年の初温泉は、近くて、この時期でも車で行ける湯河原にする。

今回はロケ地探しなどの任務はないが、湯河原といえば夏目漱石の『明暗』(asin:4003101146)。私が持っているのは上下巻に分かれた文庫版なので、今週の初めに、とりあえず下巻[B523-下](asin:4003101154)の湯河原行きが決まるあたりから読みはじめた。読み終わってそのまま水村美苗の『続 明暗』[B1198](asin:4101338116)に突入。『明暗』は何度も読んでいるとはいえ、読みはじめるとやはりおもしろくて、最初から読めばよかったと後悔。『続 明暗』は、始めのほうを読んだだけでもう当日になってしまった。これも三度目のはずだが、ストーリーは全く憶えていない。

遅めの10時くらいに鎌倉を出たら、渋滞にひっかかって湯河原まで3時間以上かかってしまった。奥湯河原の紅葉亭で天ざるそばを食べて宿に車を置き、『明暗』『続 明暗』散歩。まずは漱石が滞在し、『明暗』の舞台にもなった天野屋(左上写真)(LINK)へ。本当はここに泊まりたかったが、残念ながら休館中。しかも、『明暗』に出てくる天野屋は藤木川の反対側にあって、現在のは新館らしい。でも次は絶対泊まりたい。

それから『続 明暗』に出てくる不動滝(右上写真)へ。『続 明暗』の記述がフィクションなのか、それとも昔はもっと大きい滝だったのか、今の不動滝は身を投げて自殺をするような滝にはとても見えない。滝壺を見下ろしたりするところも、現在の雰囲気とは違っている。写真左手に見えるように、たしかに石段があるにはあるが、崩落の危険があるとかで上れない。

万葉公園をひとまわりし、茶房万葉でお茶を飲んでから、今夜の宿、伊藤屋(左下写真)(LINK)へ。ここも老舗で、「島崎藤村ゆかりの宿」というのが自慢だが、私は藤村を一冊も読んでいないので何の思い入れもない。でも古い木造家屋の本館はなかなかいい雰囲気。向かいの坂の上から眺めて、「あの三階の部屋がいいなあ」と言っていたらそこだった。

お風呂をふたつはしごしてから晩ごはん。ちゃんと少しずつ運ばれてきた点と、ちょっと変わったものが出てきた点がよかった。右下写真は藤村が好んだというとうそん鍋。今日は風が強く、古い木造家屋はすきま風が入るうえに建物ごと揺れる。エアコンの設定温度はびっくりするほど高かったが、夜はかなり寒かった。