実録 亞細亞とキネマと旅鴉

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『Crazy Stone(瘋狂的石頭)』(寧浩)[C2006-12]

まだあまりおなかがすいていないので、晩ごはんは地下のガルバニャーティミラノで軽くフォカッチャを食べる。今日の三本目、映画祭十二本目は、やはりアジアの風の『Crazy Stone』。寧浩(ニン・ハオ)監督の新作である。

寧浩監督の映画は、まだ日本で一般公開されたものはないが、『香火』[C2003-14]、『モンゴリアン・ピンポン』[C2004-30]と全部観ている。特に『香火』が好きだ。その寧浩が今度はコメディを撮るという話が聞こえてきたのは一年ほど前で、たしか今年になって、それがたいそうおもしろいらしいとか、中国で大ヒットしたとかいう声が聞こえてきた。私としては、期待半分、不安半分といった感じである。

映画の舞台は重慶市。工場のトイレから見つかった翡翠をめぐって、泥棒と警備する人、本物の翡翠と偽物の翡翠、そして翡翠をめぐるさまざまな思惑が絡み合うコメディである。たしかにすごくおもしろかった。けれどもやっぱり、私が寧浩に求めるものとは違う、という気分が勝る。寧浩の映画には、『香火』からずっとコメディの要素はあった。だからコメディを撮ること自体は驚くことではないかもしれないが、作風が違いすぎる。やはり若者は変節するのだ。もちろん、いろんな映画を撮れるのも才能であり、それがヒットして儲かればそれもいい。でも、これで売れっ子になって、似たような路線で映画を量産して…ということになると(実際そうなりつつあるらしい)、やっぱりちょっと寂しい。

主演は「中国の藤木悠」こと郭濤(グオ・タオ)。三人組の泥棒の一人がどうも見たことがあるような顔で、ずっと考えていたのだが、映画が終わってから思い出した。『あした晴れるか』[C1960-42]芦川いづみの(義理の)弟をやっていた杉山俊夫に似ているのだ。

今日は映画祭疲れがそろそろたまってきているうえに、前の回の『おばさんのポストモダン生活』がけっこう疲労する映画だったので、この映画を観始めた時点でかなり疲れていた。さらに席が前方の端のほうで、首も疲れたし、画面がかなりゆがんで見えた。そういうわけで、実際よりもかなり厳しい評価をしているのかもしれない。これは公開が決まっているので、公開されたらもう一度(朝イチで)観てみようと思う。

上映後、出演者の郭濤と音楽のファンキー末吉をゲストにティーチインが行われた。