実録 亞細亞とキネマと旅鴉

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『コール・フォー・ラブ(愛情呼叫転移)』(張建亞)[C2007-05]

今日から東京国際映画祭。とはいえ今日は六本木ヒルズには行かない予定で、提携企画の「2007東京・中国映画週間」(公式)で地味にスタート。昼前に恵比寿に行き、ひまわりでカルビ定食を食べてから、東京都写真美術館へ。今年山のように開催される中国映画祭は、主催者を見ても「○○実行委員会」といったものが前面に出ているためどれがどれやらわからないが、これは主催者に上海電影集団や北京電影学院が名を連ねている。中国映画がメインだが、なぜかとっくに公開された香港映画の『傷だらけの男たち』[C2006-31]も上映されたりしてワケがわからない。

今日の一本目は『コール・フォー・ラブ』。映画祭は今日からなのに、なぜかオープニング上映は明日。今日は、上映前に出演者のひとり、范冰冰(ファン・ビンビン)の舞台挨拶がある。時間になって、なんだか見たことのある男性がやたら緊張して司会を始めたと思ったら、『映画のなかの上海 - 表象としての都市・女性・プロパガンダ[B779](asin:476641117X)や『中国10億人の日本映画熱愛史』[B1161](asin:4087203565)を書いていらっしゃる、映画研究者の劉文兵さんだった。なんでまたこんなところに…。ゲストの范冰冰は、名前は知っているがナマも映画も見るのは今日が初めて。かなり気合の入ったメイクで登場。舞台挨拶は、司会の劉さんが通訳も兼ねていろいろ質問をするという形式。司会はかなりぎこちないけれど、表面的な質問ばかりではなく、通訳もしっかりしていてなかなか好感のもてる舞台挨拶だった。こういう場の良し悪しは、司会より通訳で、ことばのなめらかさより知識の豊富さで決まる。

映画はたわいもないラブ・コメディ。奥さん高峰三枝子がおせんべいをバリバリ音をたてて食べるからとか、晩ごはんが週に四日は一平ちゃん焼きそばだから(ウソウソ)とか、ふざけた理由で離婚した主人公が、ボタンを押すと好みの女性が現れるケータイ(子機みたいにデカい)を手に入れたことから巻き起こる騒動を描いたもの。ボタンを押すたびに現れる人気女優の競演が見どころ。といっても私が知っていたのは伊能靜と寧靜(ニン・ジン)と秦海璐(チン・ハイルー)くらい(瞿穎(チュイ・イン)と龔蓓苾(ゴン・ベイビー)も観ているはずだが、見ただけではわからず)。伊能靜はほとんど変わっていなかった反面、寧靜はすごく老けていて、恐さは三倍(というか以前とは違う恐さ)になっていた。

おもしろかったのは、范冰冰のパートと寧靜のパートあたり。手錠ギャグとか、ベタだけど楽しめた。あわよくば十代の若い女の子とおつきあいしてみたいと思っている男性は、この映画を観るといいと思う。若い子とつきあうのがどんなに疲れることかがよくわかるし、最後は頭突きをされて病院行きという情けない結末に目が醒めるかもしれない。

監督は張建亞(ジャン・ジェンヤー)という人で、タダでくれたプログラムによれば「第五代有名監督」とのことだが、私は知らない。もう少し洒落たコメディなのかと思ったら、お正月映画ということで全然そうではなかった。そのわりに、出てくる場所は最新型のマンションやきれいなレストラン。私が見たいのは胡同や里弄や四合院なのに。国内向けの商業映画は、おそらくかつて日本映画や日本のトレンディ・ドラマが(中国で)担っていたような役割を担っていて、「庶民が憧れそうな場所」ばかり出てきてつまらない。

ところで、日本語字幕は、本来数字が入っているべきなのに抜けているところがたくさん(というか九割以上)あった(仕上がりを確認していないんだろうか)。中文字幕もついていたし、数字くらいは聞き取れるのでそんなに困らなかったが、最初は前後がつながらなくてあせった。ついでにいうと、公式サイトも間違いだらけである。