実録 亞細亞とキネマと旅鴉

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『浜辺の女(해변의 여인)』(洪尚秀)[C2006-05]

時間に余裕があるのでバスで渋谷へ移動。さっそくドゥ・マゴへ行き、ホット・チョコレートをすする。パーティがあるとかでテラス席が利用できなかったのが残念。

喜楽でラーメンと餃子を食べてからオーチャードホールへ。今年は、オーチャードホールでのコンペティション部門の上映は自由席である。ちょうど開場時間くらいに行ったらけっこう行列ができていたが、余裕で前の方に座れる。

今日の三本目、映画祭四本目は、洪尚秀(ホン・サンス)監督の新作、『浜辺の女』(公式)。「『浜辺の女』という映画は観たことがあるよなぁ」と思いながらよく思い出せなかったが、あとで調べたらジャン・ルノワールだった。洪尚秀は、日本の監督を除くと今年のコンペ随一のビッグ・ネームだと思うが、それでもオーチャードホールが満席にならないのは寂しい。ロードショーもいつも空いていて、「韓流とか騒いでいるのにいったい何を観ているんだ?」と訝しく思っているのだが…。

浜辺の女』は、監督名を隠して上映しても絶対に洪尚秀の映画だとわかる映画だった。金勝友(キム・スンウ)、金泰佑(キム・テウ)、高賢延(コ・ヒョンジョン)の男二人、女一人の三角関係が、途中から金勝友、高賢延、宋善美(ソン・ソンミ)の男一人、女二人の三角関係に変わるのがおもしろい。いつものように男はダメ男で、女はけっこうヤな女。男女の腹のさぐり合い、嫉妬、嘘などが、笑いを誘う会話劇で描かれる。金勝友演じる映画監督が、高賢延が外国人の男と付き合ったという情報から如何にして高賢延に対する不正確なイメージを導くかを説くところがおもしろかった。男女が正しく理解し合うには、ウンコをしている顔を知る必要があるのだ。

舞台は薪斗里(シンドゥリ)というビーチ・リゾートだが、季節はずれのせいか異様に殺伐とした感じがすごく印象的だった。正確な表現は忘れたが、入口に「西海岸最高のリゾート」とかなんとか書かれているのがいちいち映るのも嫌味な感じでよい。

ゲストの来場はない予定だったが、突如、観客ジョイント記者会見なるものがあり、洪尚秀監督が登場。私にとっては、今年の映画祭の初ゲストだ。ひそかにそうではないかと思っていたけれど、記者会見といっても、プレス関係者が観客よりも高尚な質問をがんがんしたりするわけでは全然ないんですね。洪尚秀監督は通訳時間の節約のために英語で答えていたが、喋り方が異様に元気のない人だった。