昼食後、ホウ・シャオシエン映画祭四本目の『恋恋風塵』(映画生活)へ。たぶん二番目に好きな侯孝賢(ホウ・シャオシェン)作品。昨日の二本は、ちょうど観直したいと思っていた映画をこの機会に観ようという企画、今日の二本は、特に好きな映画を久しぶりにスクリーンで観ようという企画。客席はほぼ満員で、暑くてほとんど死んでいた。シネマヴェーラの空調は、もうちょっとなんとかしてほしい。
スクリーンで観るのは三回目。ほかにフィルムで観る機会があるわけではないので、デジタル上映なのは承知で来た。『好男好女』ではそれほど気にならなかったのに、こちらはかなりひどい。ほとんどすべてのショットでデジタル印が刻印されていて、草木の緑も不自然な色。これならノートパソコンでDVDを観たほうがいいかもしれない。最近発見したのだけれど、これはけっこう至福の体験なのだ。画面が小さいのでデジタルっぽさはあまり感じられずきれいなうえに、細かいところがスクリーンよりもクリアに見える。あるシーンを確認するためにかけて、そのまま見入ってしまうことも少なくない。
『恋恋風塵』は、主人公のワン(王晶文)が実家に帰るのを繰り返し描いた映画である。学校から家に帰る冒頭から、兵役を終えて帰るラストまで、ワンは何度も実家に帰る(あるいは帰るべきときに帰らない)。そのたびに彼の置かれている状況は変わっていて、それは誰と帰るのか、どのように帰るのか(あるいは帰らないのか)によって表される。そしてそのたびに彼は成長していく。
スタイル的には、これはもう完璧である。侯孝賢のひとつの頂点であり、初期侯孝賢なのか中期侯孝賢なのか、その集大成といえるだろう。
LDやDVDを含めると、おそらく私が最も多く観ている侯孝賢映画である(そういう意味では『フラワーズ・オブ・シャンハイ』の対極に位置する)。だからほとんどすべてのショットを憶えているし、デジタルだったこともあり、特に新たな発見はなかった。ただ今日いちばん心を動かされたのは、金門島の最後のショット。ホン(辛樹芬)の結婚を知ってワンが号泣しているショットのあと、夕刻らしい空に、風に揺れている山の木々がシルエットのように見えていて、キャメラがゆっくり横移動していく。ほとんどキャメラが動かない映画のなかで、このゆっくりした動きが妙に心に残った。キャメラはこれも李屏賓(リー・ピンビン)。
エンディング・クレジットを見ていたら、柯宇綸(クー・ユールン)が子役で出ていた。何の役だったのだろう?
(『恋恋風塵』はこれ↓に入っています(『童年往事 - 時の流れ』も)。単体では出ないのかな?)
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