実録 亞細亞とキネマと旅鴉

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『拳銃(コルト)は俺のパスポート』(野村孝)[C1967-30]

今日は一年で一番いやな日。すなわち健康診断の日である。しかも健康診断のためだけにオフィスへ行き、それからはるばる新宿へ。せっかくなので、仕事のあとはフィルムセンターへ『拳銃は俺のパスポート』を観に行く。これはたぶん日活アクションの代表作のひとつ(なのにDVDも出ていないのが許せない)。時々上映されているようだが、これまで観る機会を逃していた。野村孝監督の映画も実は初めてだ。開場前に並んでいた人はびっくりするほど少なかったが、始まるころにはほとんど埋まっていた。

宍戸錠ジェリー藤尾は殺し屋。依頼どおりアラカン(嵐寛寿郎)を殺すが、依頼したボスとアラカンの息子が手打ちをしたため追われる身となる、というストーリー。モノクロの画面や音楽がかっこいい。チラシには「和製ハードボイルド・アクション」と書いてあるが、どちらかというとフィルム・ノワールという感じ。宍戸錠はいつものようにおちゃらけてはおらず、無口でクール(おちゃらけていてもそれなりにクールなのだが)。荒野のような埋め立て地(今DVD-Rを見たら川崎だと言っていた)や、うらぶれた雰囲気の渚館のあたり。無国籍っぽいロケ地も印象に残る。

宍戸錠には内面がない。弟分のジェリー藤尾やヒロインの小林千登勢(珍しいものを見たという感じ)との関係は、ただ物語を前に進めるために存在しているようにみえる。宍戸錠が最後にひとりで敵に立ち向かうとき、すべてはこの状況を作り出すためにあったのだと納得してしまう。それが悪いと言っているわけではない。この内面のなさがおそらく宍戸錠の魅力なのだ。そこに宍戸錠があること自体がすばらしい。内面を想像する必要などない存在感。ラストシーンが特にすばらしい。

ラカンの息子が杉良太郎。「杉さま」とか騒がれているのを見てもどこがいいのかさっぱりわからないが、若くて、しかも内田朝雄の隣に並んでいると、たしかにハンサムに見える(好みではないが)。アラカンと親子だというのも、華麗なる一族という感じだ。

結局、映画はすごくおもしろかったし、夢民のサマーカレー(5hot)も食べたし、移動が多くて本もたくさん読めたし、今日はけっこういい日だった。