実録 亞細亞とキネマと旅鴉

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『有りがたうさん』ツアー(鎌倉→下田→天城峠→修善寺→三島→鎌倉)

三連休を利用して、鎌倉→下田→天城峠→修善寺→三島→鎌倉と、伊豆ドライヴ旅行をしてきた。主な目的は『有りがたうさん』ツアー。『有りがたうさん』と同じルートを走るのは前から一度やってみたかったが、こんな暮れも押し詰まった極寒の時期に行くことになったのは、J先生が今年の目標に「『有りがたうさん』をきわめる」と書いてしまったせいである。期末になると今期の目標をなんとか片づけるという会社の仕事と同じだ。

同じルートといっても、『有りがたうさん』(清水宏)は1936年の映画なので、道路はほとんど新しくなって位置も変化している。変わっていないはずの山の形に期待していたが、これがけっこう難しい。少し位置が違うと形が変わってしまうし、車だと好きなところで止まったり戻ったりすることができないし、だいたいどこも山だらけなので、似ていると思えば似ているし、似ていないと思えば似ていない。というわけで、結局、映画に出てくるところは、旧天城トンネル以外ほとんどわからなかった。わかったことは、下田から湯ケ野へのルートは、下田街道を通るルートと、海岸沿いに出て伊豆白浜を通って河津浜から内陸へ入るルートとを合成したものであるということ。清水宏はそういう手の込んだことはしないと思っていたのだが、すっかり騙されていた。

『有りがたうさん』ツアー自体は、山の形や景色をチェックしたり、ナビしたりするのに忙しくて、出会う人に「ありがとう」と言ってみたり、異様にゆっくりしゃべってみたり、羊羹を食べたり(用意するのも忘れた)、ヒゲの具合を確かめたり(付け髭も用意するのを忘れた)する余裕もなかった。外はあまりに寒くて、石を投げてみたりする気にもなれなかった。実際に走るより、映画を観ているほうが旅行気分を味わえる。今度はもっと暖かい時期に行きたい。映画の中でも「どうせ行くなら寒くならないうちにと思って」と言っている。

昨日の夜は、『お茶漬の味』(小津安二郎)に出てくる修善寺の新井旅館に泊まってみた。こちらは映画の雰囲気がかなり残っていた。鈍感さんは見当たらず、浴衣の柄も瓢箪ではなかったけれど(当時も違ったと思う)。修善寺といえば『博奕打ち 総長賭博』(山下耕作)だが、こちらはほとんど全滅(そもそもどの程度修善寺で撮っているのか疑問)。

昨日通った下田街道旧道と、今日の帰りに通った箱根新道で、ちょっとだけ積雪を見た。箱根新道はところどころ凍ってるっぽくて、せっかくの下りカーヴも下り最速とか言っている場合ではなかった。ということでいちおうホワイト・クリスマスだったが、こういうホワイト・クリスマスは全然ありがたくない。