実録 亞細亞とキネマと旅鴉

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『金薬局の娘たち』

フィルムセンターの「韓国リアリズム映画の開拓者 兪賢穆監督特集」の一本、『金薬局の娘たち』を観るため、急いで京橋へ移動。この特集は、初日の『誤発弾』を観るつもりだったが、仕事が終わらなくて行けなかった。それで「もうこの特集は行かなくていいや」と投げやりな気分になっていたところ、金曜日にSomeCameRunningを見たら「『終電で来た客たち』がもっとも印象深かった」と書かれていて(id:SomeCameRunning:20051212#p1)、「今日は何をやっているかな?」と思ったらちょうどその『終電で来た客たち』。「行くぞ」と決心したが、やはり仕事が終わらなくて行けず。意を決して今日、『4:30』のQ&Aを聞かずに『金薬局の娘たち』に行くことにした。

兪賢穆(ユ・ヒョンモク)監督の代表作と言われるこの映画は、日帝時代の統営を舞台に、砒素で自殺した祖母のたたりだとかで美人四姉妹にふりかかる悲劇を描いたもの。これでもかこれでもかと際限なくふりかかる悲劇(思わず朝観た『結婚相談』を連想)がすごい。「アイゴー」を連発しながらいかにも韓国映画風に大仰に嘆きつつ、娘たちの間をやたらとうろうろした揚げ句に無残に殺されてしまうお母さんが圧巻だが、もう少し娘たちを中心に描いてもよかったのでは。最後は一応救いのようなものがあって、どうやら近代化や教育や抵抗やキリスト教に救いがあるようなのだが、悲劇づくしで救いもなく終わったほうが映画としては面白そうだ。兪賢穆監督がどういう監督かほとんど知らないので何とも言えないが、これが代表作というのはどうなのか。とりあえずほかの映画も観てみたいが、今回の特集はもう行けそうにない。

あまり混んでいなかった客席を見ての勝手な感想だけど、どうも「韓流ブーム」なるものはこういう特集とは全然関係がないらしい。60〜70年代の香港映画や台湾映画が上映されたら中華圏映画好きの人はかなり行くのに、そういう雰囲気は全然なくて、いつもの客層からじーさんばーさんを抜いたような感じ。なんとなく寂しいですね。ところで今後フィルムセンターには、李晩煕(イ・マニ)監督の特集などやってほしい。

久しぶりに銀座方面に来たので、夕食は上野広小路へ移動して蓬莱屋でひれかつ(ちょうど今週のぴあの最後のページに写真が載っていて、もう我慢ができなかったのだ)。