実録 亞細亞とキネマと旅鴉

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『アクシデント(意外)』(鄭保瑞)[C2009-48]

新宿武蔵野館で、鄭保瑞(ソイ・チェン)監督の『アクシデント』(公式)を観る。2009年のフィルメックスで『意外』として上映されたときは観られなかったので(なぜ観られなかったのか忘れたが、チケットが取れなかったのかな?)、今回が初見。

主人公は、手の込んだ方法で事故死に見せかけて殺すのが専門の殺し屋チームのブレイン、古天樂(ルイス・クー)。ある殺しの際に仲間の林雪(ラム・シュー)が事故死し、自身も危ない目にあった彼は、これは偶然ではなく、自分たちが狙われたのではないかと考え、真相を究明するため、この事件に関連のある保険会社の男、任賢齊(リッチー・レン)を監視しはじめる、というお話。

陰謀論はきらいではないので、実は何かあるのかもと思って観ていたが、そうではないところがこの映画のアイデアなので、そんなはずはなかった。最初からこれは、古天樂のアタマの中の妄想がどんどん膨らんでいく話。妄想だけならいいが、現場のいろいろな条件から「事故」を起こすネタを山ほどもっているために、咄嗟にそれを実行してしまって悲劇が重なる。

一発アイデアとしてはおもしろいが、「なるほどねー」と感心して終わってしまわないでもない。何度か出てくる事故を装った殺しは、複雑すぎて観ていていまいちよくわからないので、見せ物としては苦しいところがあると思う。街の中でいろいろなことが起こるので、香港の街がたくさん出てくるし、最近注目しているトラムも出てきてよかったが、それほど街が魅力的に描かれているわけでもなかった。

古天樂と任賢齊が主演の映画なんてあまりにも地味で、よく公開されたと思うが、製作が杜琪峰(ジョニー・トー)なので、シネフィルの動員も見込めるからOKなのだろうか。古天樂は、怪しまれないためにいろいろな職業を装った変装をするので、古天樂の着せ替えコスプレ映画としても楽しめるが、そもそも目立たないための変装なのでいずれもたいへん地味である。いろんな意味で通向けの映画。