実録 亞細亞とキネマと旅鴉

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『深海』

今日も有給休暇。カフェでパニーニを食べてから会場へ。今日の1本目は、鄭文堂(チェン・ウェンタン)監督の『深海』。心の病を抱える前科のある女性が、男性と出会っては傷つき追いつめられていく話。

主人公の阿玉を演じるのは蘇慧倫(ターシー・スー)。『藍月』以来8年ぶりだが、全然変わっていないように見える。はっきりいってかわいい。彼女の面倒をみる女性・安姐に陸奕靜。言わずと知れた蔡明亮映画の常連だが、蔡明亮、李康生作品以外では『無言の丘』でしか観たことがなかった。今回の彼女は、それらのイメージとはかなり異なっている。彼女も年齢不詳だ。阿玉が病気だからといって特別扱いしたりせず、言いたいことを言ったり厳しく接したりする。でも、いざとなったら無条件に彼女を受け止めてあげるという役柄。役柄もいいが、チャチャを踊る腰つきや、孤独をさりげなくにじませた演技もよい。阿玉と同棲する男性に台流スター・李威(リー・ウェイ)。初めて見るが、アイドルのわりにぶさいくだ。

舞台は高雄。阿玉が出所して安姐の家へ向かうところで、いきなり鼓山輪渡站が出てくる。安姐の家は旗津にあるらしく、阿玉はフェリーに乗る。何度も出てくるフェリー。安姐の店のホステスをやめた阿玉は、工場で働き始める。『風櫃の少年』を思い出させずにはおかない。最後には布袋戲も登場。侯孝賢(ホウ・シャオシェン)の影響について聞いてみたかったが、聞いてはいけないことのような気もする。

上映後、鄭文堂監督をゲストにティーチ・インが行われた。北京語-英語の通訳だったため、質問も答えもいちいち英語を介してまだるっこしくて仕方がなかった。質問の意図もなかなか伝わらなかったようだ。ティーチ・イン採録こちら([亞細亞とキネマと旅鴉]の[ドゥ・マゴで逢いましょう2005])。