実録 亞細亞とキネマと旅鴉

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“American Sniper”(Clint Eastwood)[C2014-101]

PVR: Koramangalaで、Clint Eastwood(クリント・イーストウッド)監督の“American Sniper”を観る。英語。『アメリカン・スナイパー』の邦題で2月21日日本公開予定。

  • アメリカが危険にさらされている、愛する人を守りたい…という単純な動機で軍隊(Navy SEALs)に入ってイラク戦争に派兵され、射撃の才能を生かして人を殺しまくった男Chris Kyle(Bradley Cooper)の半生を描いたもの。レジェンドとかヒーローとか呼ばれながらも動機とやっていることとのギャップに苦しみ、家に帰るとPTSDに悩まされて日常生活に馴染めず、守りたかった妻には「守ってねーよ、守るんなら家でやれよ」と言われながら、憑かれたように戦場へと戻って行く男が、やっとアメリカで居場所を見つけ、家族と穏やかな暮らしを始めたとたん、その新たな居場所と思ったところから無慈悲に拒絶される、という皮肉なお話。最後は英雄として送られるところも皮肉さに輪をかけている。
  • 感傷的なシーンはほとんどなく、イラクに行って、アメリカに戻って、またイラクに行って、戻って…という主人公の行動が淡々と描かれているのがいい。
  • 戦争に行って人殺しをすることを、愛する人を守るとか美しいふるさとを守るとかと言い換えて(そう言われると納得しちゃう人が世の中にはたくさんいる)、残酷さや悲惨さを感動にすり替えるような詐欺映画が日本にも世界にもたくさん存在している。しかし、愛する人を守るのと戦争に行くのとの間の因果関係には桶屋もびっくりの距離があり、単純な動機で行った戦争の中身はそんなキレイごとや感動とは似ても似つかない、厳しく凄惨なものなのだということが、この映画を観ているとよくわかる。
  • イーストウッド共和党なので、政治絡みの映画を撮られると緊張する。この映画も、なぜ人殺しを英雄視するのかとかいろいろ言われているようだが、主人公がヒーローとして描かれているとか、愛国的な映画だとかいうことはぜんぜんないように思えた。
  • IMAX初体験。ちょっと高いけれど、迫力があってよかった。砂嵐の中を脱出するシーンがすごかった。
  • Chris Kyleを演じたBradley Cooper(ブラッドリー・クーパー)は、軍人ではないとき(最初と最後)と軍人のときが全く別人みたいで、なかなかの好演だった。