実録 亞細亞とキネマと旅鴉

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『映画はやくざなり』(笠原和夫)[B1293]

『映画はやくざなり』読了。

映画はやくざなり

映画はやくざなり

笠原和夫の本は何冊か出ているが、大部の『昭和の劇 - 映画脚本家 笠原和夫[B1097]を読んだので、それで十分だろうと思っている。どれも似たようなことが書いてあるにちがいないと。読んでみたら実際そのとおりだが、悔しいけれどマキノ雅弘(雅広)と笠原和夫の話は何度読んでもおもしろい。

映画化されなかった脚本は20本あるらしいが、三大オクラ映画を選ぶとすれば『実録・共産党』『沖縄進撃作戦』『昭和の天皇』だろう。すごすぎる。そのような映画が企画されただけでも驚きなのに、脚本も完成し、一度は撮ろうという話になっているのだ。日本の映画界も、昔は棄てたもんではなかったのかもしれない。

この本を買ったのはほかでもない、その『沖縄進撃作戦』のシナリオが掲載されているからだ。『沖縄やくざ戦争[C1976-V]を観たら(id:xiaogang:20080615#p2参照)、どうしてもオリジナルの脚本が読みたくなった。読んでみると、たしかにこれはおもしろい。そしていかにもヤバそうで、実現しそうにない。タイトルに「この作品はすべて創作であり、実在の個人・団体等とは一切関係ありません」と出ることになっている。これでは「実在の人物をモデルにしている」と宣言しているに等しい。『沖縄やくざ戦争』に比べると、国家とかナショナリズムとかいったものがもっとはっきりと描かれている。沖縄語の台詞があるのもいい。脚本はすごくよくできていて一気に読ませるが、映像化するとなると、このままではちょっと説明過剰かもしれない。

今だったら映画化できないこともないと思うが、今の日本の俳優には出てほしい人が全然いない。だったらいっそのこと、タブー度も薄まる中国かどこかで映画化したらどうか(いつもこれだ)。役名の代わりに『沖縄やくざ戦争』の俳優名でいうと(主な登場人物は『沖縄やくざ戦争』と重なる)、千葉真一が梁家輝(レオン・カーファイ)、松方弘樹が胡軍(フー・チュン)でどうですか。これとは全然別に、沖縄が舞台の『カラマーゾフのチョウデー』っていうのもいいなあ。