フィルムセンターの特集「よみがえる日本映画 vol.5 日活篇」(公式)で、野口博志監督の『地底の歌』を観る。
- 『関東無宿』と同じ原作で脚本まで同じと聞いたので、この特集でいちばん楽しみにしていた映画だったが、ほんとに脚本まで同じだった。それで出来上がりがこんなに…と思わないでもないけれど、たまたま鈴木清順にリメイクされてしまったのが不運だったとしか言いようがない。
- それで小林旭の役は誰かといえば、あろうことか名和宏。かっこ悪い。名和宏も着流しであればそれなりに格好がつくのに、この映画では洋服である。似合わない。どうしようもなく、背広が似合わない。アキラが超かっこいい着流しで登場するのを知っているので、洋服での間抜けな登場シーンはなおさらいただけない。その彼を見て女子高生三人組が「ハンサムだわ」とか言うものだから、一部観客のあいだでは笑いが渦巻いていた。
- 名和宏はラブシーンも似合わない。似合わなすぎて笑いが漏れる。相手役(伊藤弘子の役)が山根寿子なのは悪くなかったけれど。
- 配役は二回りくらい地味、あるいは個性に欠けており、『関東無宿』のおもしろさは個性的な配役によるところも大きいと気づかされる。
- 今日の観客は、『関東無宿』好きと裕次郎目当てと、たぶんふたつに分かれる(このふたつはほとんどかぶらないよね)。『関東無宿』があってこその映画ではあるけれど、比較しながら観るかぎりにおいてはとても楽しく、前者はおおむね楽しんでいたと思う。裕ちゃんファンには不評みたいだったけれど。