実録 亞細亞とキネマと旅鴉

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『サニー - 永遠の仲間たち(써니)』(姜炯哲)[C2011-37]

Bunkamura ル・シネマで、姜炯哲(カン・ヒョンチョル)監督の『サニー - 永遠の仲間たち』(公式)を観る。

サニー 永遠の仲間たち デラックス・エディション Blu-ray

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  • ソウルの女子高で仲良しグループ「サニー」を結成していた7人が、リーダーの病気をきっかけに再会する話で、1986年の高校時代と2011年の現在が並行して描かれる。同じ場所に同じ人物がいるショットで1986年と2011年の切り替えを行っているのは、『J・エドガー』と同じ。
  • 高校時代の描写がやたらとマンガチックで、そのあたりは好きではない。しかしそれによって描きたかったと思われる「あのころのキラキラ」みたいなものは、十分に伝わってくる。
  • 1986年当時の洋楽のヒット曲がたくさん使われていて、そこは国を越えて「あのころ」を感じるポイントだけど、わたしは同時代の洋楽というものをぜんぜん聴かずに育ったので、「聞いたことはある」という程度で懐かしさは感じなかった。
  • 女の子たちのファッションはぜんぜんピンとこなかったが、当時の韓国と日本のファッションの流行はかなり違っていたのだろうか。1986年といえば台湾映画の『モンガに散る』と同じで、あっちはわりと「ああ、あった、あった」という感じだったのだが。
  • 1986年の韓国といえば民主化前夜であり、学生デモなどが当時の記憶として残っている。この映画にもデモ隊と警官隊の衝突シーンがあって、時代性が感じられるだけでなく、そこに反目する女の子グループの喧嘩が重ねられていることで、その前の閉塞感に満ちた時代とは違う、活気が出てきた時代の空気みたいなものも感じられる。
  • 当時の社会的背景を表すシーンとしては、「‘反共防諜’(だったかな?)という言葉を使って作文を書きなさい」というのが強烈だった。
  • この映画と『モンガに散る』は、同じ1986年が舞台であり、しかもその年が、民主化前夜あるいは戒厳令解除前夜という時代のターニングポイントとなる時期であるという以外に、もうひとつ共通点がある。それは主人公が転校生で、転校早々絡まれているところをなぜか見込まれて、目立つグループのメンバーとして迎え入れられること。これはもしかして、けっこうお決まりのパターンなのだろうか。
  • 高校の学園祭で歌って踊るはずだった『サニー』を25年後にお葬式で歌う、というのは、『些細なこと』の『おかっぱ頭のアワイ』を連想させる。これもまあ、お約束の展開ではあるが。
  • 1986年の女の子たちと2011年の女性たちは、それなりに面影の似ている女優が選ばれているが、男性には残酷。ふたつの時代に登場する唯一の男性(ヒロインがかつて憧れた人)は似ても似つかない。そりゃあ男性のほうが老ける人が多いだろうし、ヒロインよりも何歳か年上だけど、あの線の細い青年があんなおじさんになるなんて。
  • 邦題は『サニー』でいいと思う。説明的でダサいサブタイトルをつけるのが効果的とは思えないのだが、何か有効だというマーケティング結果でもあるのだろうか。