実録 亞細亞とキネマと旅鴉

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『人生とんぼ返り』(マキノ雅弘)[C1955-31]

神保町シアターの特集「華麗なるダメ男たち」(公式)で、マキノ雅弘監督の『人生とんぼ返り』を観る。同じ話の『殺陣師段平』は、マキノのもそのほかのも観ていない。

森繁久彌主演ということでちょっと気がすすまなかったが、やはりマキノなので安心して観られるおもしろさ。『次郎長三國志』シリーズほどスローでも湿っぽくもなく、あざとくなくまっとうに泣ける映画。といっても実際は泣かないけれど、概念的に。

段平役の森繁はやっぱり苦手で、時々いかにもという感じで得意になって芝居をしているのがハナにつく。森繁には勝手に得意になってもらうとして、ほかのキャストはなかなか。妻・お春役の山田五十鈴もいいが、特筆すべきは娘・おきく役の左幸子である。左幸子といえば、原体験は百恵ちゃんドラマのお母さん役で、いぢわるなイメージ。映画では、『人生劇場 飛車角と吉良常』[C1968-13]の彼女が大好きなのだが、ほかに『飢餓海峡[C1965-29]とか大映版『暖流』[C1957-26]のぎん役とか、『誘惑』[C1957-31]のパックとか、パワフルな役やコミカルな役が多い。顔もファニーフェイスで、美人とかかわいいとかいうのとはちょっと違う。それがこの映画ではめちゃくちゃかわいい。かわいくてけなげ。かわいくてけなげな左幸子って論理的に矛盾するとしか思えないが、ほんとうにかわいくてけなげ。彼女を見るためだけにでもこの映画を観る価値がある。河津清三郎や水島道太郎がインテリに見えるところにも感心した。