実録 亞細亞とキネマと旅鴉

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『うちのおばあちゃん』(春原政久)[C1955-30]

フィルムセンターの「よみがえる日本映画」(公式)特集で、春原政久監督の『うちのおばあちゃん』を観る。鎌倉ロケがあるというだけの理由で観たが、けっこうおもしろかった。

田村秋子のおばあちゃん、佐野周二のおとうさん、北原三枝が二役を演じる双子の娘、その下に弟妹3人の、計7人家族の話。『月は上りぬ』[C1955-12]と同じ1955年の日活映画で、北原三枝佐野周二安井昌二とキャストも重なるし、みんなが結婚相手を見つける話、というところも似ている。

明るくて働き者のおばあちゃんを中心とした小市民映画的な側面と、そっくりな双子の娘をめぐるラブコメ的な側面とがあり、両者がいまひとつミスマッチ。性格の異なるふたりの北原三枝と、彼女たちをめぐる男たち(安井昌二、長谷部健)の話がおもしろかったので、もうちょっとそっち中心でいってほしかった。最後に、女性ふたり、男性ふたりがそれぞれ白と黒の服を着ていて、組み合わせが変わるところは、ロメールの『友だちの恋人』[C1987-41]を思い出した。あっちはたしか同じ色の服どうしが最後にカップルになったと思うけれど、こっちは白と黒の組み合わせになる。陰陽ってやつですかね。

また後半は、佐野周二の会社のリストラと不正の問題が中心になり、重く深刻になり過ぎてダレる。佐野周二は最後に不正をただす側にまわるからいいようなものの、「不正やリストラをやるような会社でも、我慢して会社員でいるほうがいい。パチンコ屋なんてもってのほか」というおばあちゃんの論理がまかり通るのがけしからん。それって差別でしょ。

鎌倉ロケは、最後に鶴岡八幡宮神奈川県立近代美術館鎌倉館が出てくるが、途中で江ノ島の見える海岸を歩くシーンがあるので、おそらく一家の住まいも鎌倉だと思う。でもそうだとしたらヘンな描写が多かった。結局中止になるが、お墓参りの日の予定は、丸の内あたりのオフィスからいったん家に帰って、お墓参りをして、銀座に出て晩ごはんを食べる。あり得ないでしょう。オフィスのビルの診療所のお医者さんが近所の医院の息子だったり、会社の上司が近所に住んでいたり、会社のまわりの人間関係が地元でも、って都合よさすぎ。