実録 亞細亞とキネマと旅鴉

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『女の勲章』(吉村公三郎)[C1961-40]

同じく神保町シアターの「女優とモード 美の競演」(公式)で、吉村公三郎監督の『女の勲章』を観る。

洋裁学校が服飾学院へ、つまり花嫁修業から最先端のモードを扱うところへと変わろうとする時代の服飾学院が舞台。院長の京マチ子、その弟子の若尾文子、叶順子、中村玉緒に、彼女たちを次々とモノにしながら経営を拡大していく野心的なマネージャー、田宮二郎が絡む。映画としては見ごたえがあるが、ファッションはあまり印象に残らない。

第一の見どころは、大映の看板総出演的な女優の競演。田宮二郎は、地位の高いほうから低いほうへ、きれいなほうからブサイクなほうへという順番で狙っていくので、京マチ子若尾文子、叶順子、中村玉緒の順で見せ場がある。まず京マチ子は、船場の生まれでお嬢さん育ちなので、野心はありながら、男にも仕事にも最後の詰めが甘い女性。若尾文子は、男を利用してのし上がろうとする野心家だが、クールで計算高いように見えて、意外に情がある女性。ひとりだけ喘ぎ声もあって、セクシー担当。

叶順子は、最後に誰よりも野心的なところを見せはするが、いちばん見せ場がなく残念な扱い。田宮二郎に押し倒されるところも省略。いちばんブサイクで地味な中村玉緒は、さらに残念な扱いになるかと思いきや、さすがは中村玉緒という大物ぶりを発揮。もらうものをもらわないと田宮二郎にも押し倒させてあげないし、ほかの女性が校長など不確実な地位で満足しているのに対して、しっかり不動産をもらうちゃっかりさ。

第二の見どころは、田宮二郎森雅之の男優対決。田宮二郎は、期待したようなクールな役ではなく、早口の大阪弁でよくしゃべる、いかにも大阪商人という感じのやり手ビジネスマン。でももちろん、二枚目だからこそできる役。わかりやすく悪い男で、マイナス要素も商売に利用して抜け目がないが、京マチ子森雅之に乗り替えると、かなり打ちひしがれてしまう。

田宮二郎は、いくら二枚目でもとりあえず押し倒さないと女をモノにできないが、森雅之はそんなことはしない。お坊ちゃん育ちの大学教授で、穏やかに抽象的なことを語りつつ、妻を死なせた暗い過去も巧みに自己宣伝に利用する。結婚に障害があるとわかると、お坊っちゃまだから乗り越える努力などしない。「僕たちは住む世界が違う」とあっさり切る。相手の京マチ子は妻と同じ道をたどるが、彼は決して打ちひしがれたりはしないだろう。優雅な雰囲気で隠されているが、田宮二郎よりずっと悪い男。これはもう森雅之にしかできない役で唸らされるが、田宮二郎のほうがギラギラしていてよかったな。最近わたし、好みが変わってきたかも。ということで、どこかで田宮二郎特集をやってください。