大急ぎで東劇に移動。今日の2本めは、ニッポン★モダン1930で島津保次郎監督の『春琴抄 お琴と佐助』。谷崎潤一郎の『春琴抄』の最初の映画化だが、残念ながら原作は読んでいない。
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いちおうストーリーは知っていたが、なかなかおもしろかった。派手な演出や大仰な展開をせず、手堅く丁寧に描かれているのがよい。しかし、おそらく原作にはあるはずの、お琴と佐助のあいだのSM的でエロティックな雰囲気はほとんど感じられないのが残念。お琴はわがままだが、サディスティックという感じはあまりしない。佐助との結婚を望まないのも、SM的な意味でのご主人様嗜好というより、封建的な時代背景と気位の高さによるものとして描かれているように思われる。戦前だし、アイドル田中絹代の主演映画だから、それもやむを得ないだろう。
注射嫌いのわたしは、クライマックスが近づくと、「来るぞ、来るぞ」と思ってドキドキしたが、考えてみればそのもののシーンがあるはずもないので、なんとか無事に通りすぎた。お琴に「痛くなかったか?」と問われて、佐助は「このぐらいのことはなんでもありません」みたいな返事をしていたが、『盲獣』[C1969-09]みたいに、「イタイけどうれしい」とか言ってほしいものである。
ほかの『春琴抄』ものも観てみたくなった。