実録 亞細亞とキネマと旅鴉

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『春琴抄 お琴と佐助』(島津保次郎)[C1935-15]

大急ぎで東劇に移動。今日の2本めは、ニッポン★モダン1930で島津保次郎監督の『春琴抄 お琴と佐助』。谷崎潤一郎の『春琴抄』の最初の映画化だが、残念ながら原作は読んでいない。

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キャストは、お琴に田中絹代、佐助に高田浩吉。なぜかふたりとも、終始眉間にしわを寄せているのが印象的。田中絹代は、お嬢様という雰囲気はないものの(でも町人だから違和感はない)、こういう気位の高い役はすごく合っている。脇役では、田中絹代に横恋慕する若ぼん(馬鹿ぼん)を斎藤達雄が演じていて、悪役だけどキモチわるくておもしろい。

いちおうストーリーは知っていたが、なかなかおもしろかった。派手な演出や大仰な展開をせず、手堅く丁寧に描かれているのがよい。しかし、おそらく原作にはあるはずの、お琴と佐助のあいだのSM的でエロティックな雰囲気はほとんど感じられないのが残念。お琴はわがままだが、サディスティックという感じはあまりしない。佐助との結婚を望まないのも、SM的な意味でのご主人様嗜好というより、封建的な時代背景と気位の高さによるものとして描かれているように思われる。戦前だし、アイドル田中絹代の主演映画だから、それもやむを得ないだろう。

注射嫌いのわたしは、クライマックスが近づくと、「来るぞ、来るぞ」と思ってドキドキしたが、考えてみればそのもののシーンがあるはずもないので、なんとか無事に通りすぎた。お琴に「痛くなかったか?」と問われて、佐助は「このぐらいのことはなんでもありません」みたいな返事をしていたが、『盲獣』[C1969-09]みたいに、「イタイけどうれしい」とか言ってほしいものである。

ほかの『春琴抄』ものも観てみたくなった。