実録 亞細亞とキネマと旅鴉

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『エドワード・ヤン』(John Anderson)[B1265]

エドワード・ヤン』読了。

エドワード・ヤン

エドワード・ヤン

アメリカ人によって書かれた楊徳昌(エドワード・ヤン)の批評本。邦訳が出たのは楊徳昌が亡くなったからだと思うが、元の本は存命中に書かれたもののようだ。

楊徳昌の作品を、一応、台湾という視点から解釈しようとしているが、その枠組みがあまりに抽象的である。そう思いながら作品批評を読み終わり、そのあとに収録されている楊徳昌のインタビューを読むと、著者が持ち出している視点はすべて楊徳昌が著者に語ったものであることがわかる。つまり著者は、楊徳昌が台湾について語ったことを、彼の各作品に当てはめて解釈していると思われる。楊徳昌が語っていること自体、外国人に向けた抽象的なものであると思うし、著者はそれを台湾の具体的な現実に照らして十分に理解しているとは言い難いので、かなり強引なものになっていると思う。

36ページにわたる楊徳昌のインタビューは、これだけのまとまったものはほかに見たことがなく、最後の作品となった『ヤンヤン 夏の想い出(一一)』[C2000-03]以降のものでもあり、非常に貴重なものである。このためだけにでもこの本を読む価値はある。内容的にも非常に興味深いものだが、世界は楊徳昌が考えるほど単純ではないとも思う。それに、彼は仕方なく理系に進んだと語っているが、インタビューを読んでいると(映画からも感じられることだが)、良くも悪くも理系の人だということを強く感じる。