実録 亞細亞とキネマと旅鴉

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箱根旅行往路:鎌倉→仙石原→芦ノ湖→宮ノ下→堂ヶ島温泉

今日はJ先生の職場がお休みなので、わたしも有休を取って箱根へ行く。映画祭疲れをとるための、久しぶりの温泉。

昨日は帰りも遅く、準備の時間も取れなかったので、ゆっくりめに起きてから準備をしたら、出発が9時半すぎになってしまった。数日前まで雨だった天気予報は、くもりになり、さらに晴れになったので、すっかり安心して出かけたら、外は雨が降っていた。そのうち止むだろうと軽く考えて出発。平日なので道路はすいていて、小動も湘南大橋も知らないあいだに過ぎ、西湘バイパスの通行止めも終わっていてすいすい行けた。仙石原へ行くため、箱根口で下りて国道1号線から138号線へと進む。箱根湯本から宮ノ下あたりはすこぉし混んどったが、それでも11時半前に仙石原に到着。

昼ごはんは、仙石原のSOLO PIZ"Z"Aで、プロシュートのピッツァとグリーンサラダ。なかなかおいしかったし、暖炉があるのがいい。平日なのにお客さんもけっこう来た。今回観光の予定は特にないので、食後はとりあえず芦ノ湖(左写真)へ行く。ここまで雨は降ったり止んだりで、気温が上がるという予報も当たらず、芦ノ湖は死ぬほど寒い。外にいたくないという理由で箱根関所を見る。復元整備されて今年公開されたばかりとのことだが、なんだかピカピカしていてのれない。「なななんと」とか勝手に盛り上がっている解説音声にもひいてしまう。せっかくなのでたまには海賊船にでも乗ろうかと乗り場へ行ってみるが、あまりに高いのでやめる。いまや海賊船の主要な客は外国人観光客らしく、中国語やタイ語ばかり聞こえたので、乗ったら楽しそうではあるのだが。


宮ノ下へ移動し、富士屋ホテル(右写真)へお茶を飲みに行く。平日の箱根の観光客は、外国人や老人、おばさんグループが多いが、時々見かける若い人はJ先生の会社かも、などと言っていたら、富士屋ホテルのロビーで本当に知り合いに声をかけられていた。ティーラウンジ・オーキッドは混んでいて、窓辺の席ではなかったのに憤慨したが、懐しい味のケーキとお茶を楽しむ。

今夜の宿は、宮ノ下のすぐ下、堂ヶ島温泉の対星館花かじか(公式)。専用のケーブルカーで山を下りるのだが、かなり小さいおもちゃみたいな車両。300mあまりを7分かけて下りる。このあたりの紅葉は今が見頃で、紅葉のことなど全く念頭になくやって来たのにラッキーだ。ケーブルカーを降りて、早川に架かる橋をいったん渡り、もう一度別の橋を渡ったところに旅館はある。隣には晴遊閣大和屋ホテルというのがあり、こちらは専用ロープウェイがあるようだ。

この旅館は、川端康成の『名人』[B1245](id:xiaogang:20071001#p1)や邱永漢の『客死』(id:xiaogang:20060915#p1)に出てくるところ。『名人』では、いったん対局の場所に選ばれたが、谷川の音でよく眠れないという名人のわがままで宿がえされ、結局対局は行われなかった。だから記述はほんのわずか。

宮の下から堂ヶ島へ下りるケエブル・カアに乗って、真下に早川を見ると、濁流が荒れ狂っていた。対星館はその川中島のようなところに立っていた。(p. 54)

とあるが、少なくとも現在の位置を見ると、この記述は正しくないように思う。『客死』は林献堂をモデルにした小説で、対星館は、林献堂(小説では謝万伝)に省主席を引き受けるよう依頼しに来たK将軍との会見の場所として登場している。対星館の名前は出てこないが、次の記述からここがモデルとみて間違いないだろう。なお、10年前までは釣橋だったらしいが、今は釣橋ではない。

宮ノ下で車を捨てて、宿屋に下りるケーブルに乗った。山は新緑につつまれて美しい。(『邱永漢 短編小説傑作選 - 見えない国境線』p. 116)

大小様々の石がころがっている溪流に懸った釣橋を渡ると、旅館の庭園になっている。(p. 117)

部屋は、建て増した比較的新しいところで渋くはなかったが、早川に面していて窓から紅葉が眺められる。夕食は、海鮮が多く内容的にはいまひとつだったが、少しずつゆっくり持ってきてくれるところは好感がもてた。肝心の温泉は、時間によって男女が入れ替わる大浴場が二つだが、どちらも野天風呂つきでけっこうよかった。大きいほうは、野天風呂から身を乗り出すと早川が見える。有料の貸し切り野天風呂もあり、檜風呂と岩風呂のうちの岩風呂のほうを借りる。いったん外に出なければいけない場所だったのには閉口したが、思ったより広く、お風呂が二つもあるし、ワイルドな雰囲気でなかなかよかった。今日は三回もお風呂に入ったので、お風呂の入りすぎで疲れた。