実録 亞細亞とキネマと旅鴉

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『インターポール - 国際刑事警察機構の歴史と活動』(マルク・ルブラン)[B1189]

『インターポール - 国際刑事警察機構の歴史と活動』読了。

インターポール―国際刑事警察機構の歴史と活動 (文庫クセジュ)

インターポール―国際刑事警察機構の歴史と活動 (文庫クセジュ)

『100発100中』[C1965-31]や『野郎に国境はない』[C1965-36]など、60年代の日本映画には、よくインターポールが登場する。しかし最近の映画などでその名を聞くことはない。このインターポールは実在したのか、今も実在するのかということは、ずっと頭の隅に引っかかっていた。そこでたまたま見つけたのがこの本。

単に私がどれほど無知だったか、ということをさらけ出すだけなのだが、なんのことはない、インターポールというのは国際刑事警察機構(ICPO)の通称である。それならニュースなどで日常的に耳にしている。なぁんだ。ニュースでは通常「ICPO国際刑事警察機構」と言っているが、どうして「インターポール」と呼ばないんだろう。

そういうわけでインターポールは実在するが、その実情は映画とはかなり異なる。それに関する説明を引用する。

……国境を越えて迅速かつ効果的に事を運ぶために警察間で直接的かつ定期的で信頼に足る業務関係を築くことが必要となった。こうした関係をうまく動かしていくのがインターポールに課せられた任務である。
 ICPO自体はこうした成り立ちによる制限を受けている。つまり、国家主権の及ぶ場所では外国の警察と同様の行為をする権利しか持ち合わせていないということである。ICPOに対する一般のイメージは、各地へ足を運んでは捜査を行ない、武器を携え、みずから身柄拘束に挑むというようなものであるが、現実はこうしたスーパー警察官の牙城とは異なっている。ICPOは国家主権を尊重し、捜査にかかわる仕事は各国の国内警察機関が担当する。……(pp. 104-105)

もっとも、この本の一番最後には次のように書かれている。映画のインターポールが現実になる日も、そう遠くないのかもしれない。

……現実には、超国家的とも言える国際犯罪網が急速に組織化していくなかでは、国際刑事警察の発展が急務である。ICPOの加盟各国がよりいっそうの任務をICPOに与え、その遂行のための手段を備えさせることは不可能ではない。専門家のなかには、将来的には二十一世紀中に国家主権の一部が移譲され、インターポール警察官学校が創設されるとまで予測する者もいるのである。(pp. 170-171)

日本のインターポール映画はかなりたくさんあるのだと思いこんでいたが、検索してみた限りでは、上述のもののほか、三橋達也主演の『国際秘密警察』シリーズ(これは未見)くらいしか見つけることができなかった。これらの多くが1965年に集中している。しかしインターポールの歴史上、特に1965年に意味があるわけではなさそうだ。またインターポールは、『デイジー』など最近の映画にも登場しているらしい。