実録 亞細亞とキネマと旅鴉

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『エレクション2(鄢社會2以和為貴)』(杜蒞峰)[C2006-22]

今日はちゃんと5時まで働いてから有楽町へ。開演まで30分しかなかったので、晩ごはんは吉野家豚キムチ丼を食べる。東京フィルメックス三本目も特別招待作品で、杜蒞峰(ジョニー・トー)監督の『エレクション2』。公式カタログの杜蒞峰監督の写真が、『エレクション』と『エレクション2』とで別々だったのが笑えたが、上映前のメッセージもちゃんと別々だった(あたりまえだが)。

映画は、『エレクション』[C2005-43]の二年後の次の会長選挙を描いたもの。前作で予告されていたように、今度は阿樂(任達華(サイモン・ヤム))対Jimmy仔(古天樂(ルイス・クー))の対決である。古天樂は田宮二郎度が倍増。阿樂は、紳士然としたところは消えて、なりふり構わず再選を狙う権力の亡者になっている。対するJimmy仔は大陸での商売に成功し、黒社会の掟にも仁義にも興味がない、ショーバイがすべてという男。これに、大陸での商売をめぐって中国の公安が絡む。今回は阿樂対Jimmy仔の抗争がかなりストレートに描かれており、観ている間は前作よりおもしろく感じた。やはり席は後ろだったが、映画祭用の別字幕はけっこう読みやすく、映像を楽しむ余裕もあった。しかし終わってみると、やはり『エレクション』のほうが残るものが多いように思う。

香港黒社会は、もはや本来の設立の目的とは無関係の、商売がすべて金がすべての組織になってしまっている。しかしそこから大陸での商売につながり、それをコントロールする大陸の公安につながっていくと、少なくとも言葉のうえでは「国の繁栄のため」とか「愛国心」とかにつながっていき、元々の「反清復明」的なところにつながる円環構造になる。その皮肉な連鎖が興味深い。いささか強引に結びつければ、これは「愛国心」なるものが、いかに都合よく、いかに様々に利用され得るかということの証左でもある。だからこの映画を観たみなさん(もちろん観なかった人も)、教育基本法の改悪に反対しましょう。

この公安とのつながりから、次は『県警対組織暴力[C1975-25](asin:B00007M8NK)ならぬ『公安対組織暴力』が期待される。今度は公安もスターでお願いします。

ところで、二年ごとの会長選挙というのは、明らかに効果よりも弊害のほうが大きいのではないだろうか。組織の将来を担うはずの優秀な人材がどんどん殺されていくし、毎度二手に分かれて争っていたら、会長が決まったあともしこりが残るだろう。第一こんなに派手に内部抗争をしていたら、ほかの組にシマを奪われたり抗争をしかけられたりするに決まっている。もちろん、公正に選挙で選ぶのであればいい制度かもしれないが、それにしても二年は短すぎる気がする。