バンガロールに来ちゃったの

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『エレクション(鄢社會)』(杜蒞峰)[C2005-43]

新橋でいったん降りて夢民でカレーを食べてから、有楽町へ移動してマリオンへ。東京フィルメックス二本目は、特別招待作品で杜蒞峰(ジョニー・トー)監督の『エレクション』(公式)。公開が決まっているので行かなきゃいけないわけではなかったが、月曜日の『エレクション2』を観るために観る。

上映の前に監督のメッセージが読み上げられる。「これまで描かれなかった黒社会をありのままに描いた」というのを聞いたあと、映画が始まると‘出品人:向華強’の文字。複雑な気分だ。だから描けないという面も、だから描けるという面もあるのだとすれば、結局同じことなのだけれど。

映画は、黒社会の会長選挙を描いたもの。タイトルから、私はてっきり自民党(たとえばね)が黒社会にお金を渡して候補者を当選させるというような生々しい話を想像していたのに、黒社会の会長選挙の話だったとは。会長候補は二人。礼儀をわきまえ、一見紳士的だが、すべては組織と自分の権力のため、硬軟使い分けるといった感じの阿樂(任達華(サイモン・ヤム))。戦闘的で忍耐力がなく、会長の器ではないが、金儲けはうまい大D(梁家輝(レオン・カーファイ))。まず阿樂が会長に選ばれるまでが描かれ、次に会長の印である龍頭棍をめぐる争奪戦が描かれ、そして龍頭棍を手にした阿樂が、いったんは抗争を回避したあと、名実ともに会長として組織を固めるまでが描かれる。

阿樂と大Dが、片方が善玉でもう片方が悪玉というのではなく(途中そう見えなくもないが)、片方が主でもう片方が従というのでもなく、等分に描かれているのがユニークなところ。それは両方ともスターを使っていること、特に大Dのほうに(たぶん)格上の梁家輝を使っているところからもわかる。最近は、ちょっとくだびれた渋い中年としての魅力を発揮している梁家輝が、久しぶりにはじけた演技を見せているのが見どころのひとつだ。また、この二人に絡む次の世代、Jimmy仔を、古天樂(ルイス・クー)がなかなかクールに演じている。阿樂と大Dは対照的に描かれているが、単に紳士と狂犬というのではなく、いろいろな面が描かれているのが興味深い。たとえば阿樂が家で息子と食事をしている「ふつうのお父さん」のシーンは、ラストと対照をなしていて効果的である。

内部抗争しか描かれていないが、香港版『仁義なき戦い』といってもよい。任達華にあたる適切な役柄は見つからないが、梁家輝が千葉真一で、古天樂が(『完結篇』の)北大路欣也。でも顔は田宮二郎

とにかく淡々とクールに物語が展開する。杜蒞峰の映画は、どこかにちょっとセンチメンタルなところがあって、それが私の好みとしてはマイナスに働くことが多いのだが、この映画にはそれがあまりなくてよかった。だけどヤクザ映画だとどうしても日本映画と比べてしまう。時代も場所も異なるのだから、同列で比較はできないと思うし、今まで描かれていない新鮮な部分もあるけれど、やっぱり『仁義なき戦い[C1973-13](asin:B000J6H3PU)には全然かなわないよなぁなどと思い、物足りなく感じてしまうのも事実である。

席がすごく後ろでスクリーンも小さく、しかも字幕が下についていて非常に読みづらかった。字幕を読むのに精一杯で、映像を味わうどころか、画面を観る暇さえないショットもけっこうあったのが残念だ。これはおそらく公開用の字幕だと思うのだが、かなり読みづらいので心配だ。