実録 亞細亞とキネマと旅鴉

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『三級風雲 〜懐かしの90年代香港18禁映画時代〜』(伊藤卓、杉山亮一、浦川とめ)

伊藤卓、杉山亮一、浦川とめ・編著『三級風雲 〜懐かしの90年代香港18禁映画時代〜』(賓陽舎、2005)(公式)を読み終わる。

1994年から1996年頃は香港三級片にけっこう興味があったけれど、たまたま三級に指定された一般映画を除けば、結局観たのは片手をちょっと越えるくらいしかない。映画館で観たものについていえば、初めて香港三級片を観たのは1994年で、歌舞伎町のレイトショーにひとりで行った『真説 エロティック・ゴースト・ストーリー(聊齋三集之燈草和尚)』。当時は香港映画にはまり始めた頃だったので、かなり気合いが入っていた。最後に観たのは1997年で、『エボラ・シンドローム 悪魔の殺人ウィルス(伊波拉病毒)』だと思う。香港で観たのは1995年に早場で観た“賊王”のみ。これを観たのは任達華(サイモン・ヤム)が出ているというのが主な理由だが、「エロかな、グロかな、暴力かな」とか言いながら行ったら全部だった。かなり「観なけりゃよかった」という映画だったが、みなさん携帯電話などしながら楽しそうに観ていた。

この本が企画されていると聞いたのは、そういった頃からそんなに時間が経っていなかったので、けっこう楽しみにしていたのだけれど、やっと出たときはもう三級片なんて記憶の彼方で、「いまさら読まなくてもいいか」と思った。だけどかなり充実していそうな内容が気になって、遅ればせながら東方書店で買い求めて読んでみた。結果、かなり面白かった。作品を一本も観ていない女優のインタビューや、観ていない作品の話がかなりの部分を占めるにもかかわらず、全編興味深く読める。それはたぶん、三級片がどうして流行ったのか、どうして廃れたのか、どういう意味をもっていたのかといった映画史的な視点がかなり入っているからだろう。三級片が香港映画史の一ページとなってしまったように思われる今、三級片の総括として一家に一冊あってもいい本だと思う。

あらためて考えてみると、純粋な三級片では、舒淇(スー・チー)も李麗珍(ロレッタ・リー)も葉玉卿(ベロニカ・イップ)も観ていない。やはり『ロレッタ・リー×スー・チー in SEX&禅(玉蒲團2之玉女心經)』くらいは教養として観ておかないといけないのではないか。スカパーでやってくれないかな。

この本のよくないところは、人名がカタカナ表記であること(初出のときなどは漢字も書いてあるが)。漢字で書いてほしいものである。基本的に漢字のイメージで記憶しているので、カタカナでわかる人であっても落ち着かないし、それほどメジャーではない人もたくさん出てくるので、漢字じゃないとアイデンティファイしづらい。それからもうひとつ、「バストトップ」とか「アンダーヘアー」とかの用語。ちゃんと日本語ではっきり書いてほしい。特に「バストトップ」なんて言葉は聞いたことがない。「バストトップを見せる」と言われても、あんまりありがたみが感じられないですよね。やっぱり乳首じゃないと(そんなこと思うの私だけ?)。