実録 亞細亞とキネマと旅鴉

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『大鹿村騒動記』(阪本順治)[C2011-05]

丸の内TOEIで、阪本順治監督の『大鹿村騒動記』(公式)を観る。

原田芳雄大楠道代という『ツィゴイネルワイゼン[C1980-06]コンビを主演に迎えた映画で、原田芳雄の遺作となった。原田芳雄は「何をやっても原田芳雄」というタイプの俳優なので特別好きではなかったが、70歳になってもこれまでどおりの原田芳雄なのに、ある意味感動した。実はここ数年、テレビで見てすぐにはわからないことが何度かあったのだが、これはすぐにわかった。わたしの中では原田芳雄はずっと40代くらいのイメージであり、今日観に来ているじいさん、ばあさんと同世代とはとても信じられない。

映画の舞台は長野県下伊那郡大鹿村。三百年以上続いている、村人による大鹿歌舞伎の公演の前後一週間くらいのドタバタが、原田芳雄の店に臨時アルバイトにやってきた冨浦智嗣の視点で描かれる。村人たちがリニア新幹線の誘致をめぐって揉めていたり、18年前に駆け落ちした原田芳雄の妻・大楠道代が突然戻ってきたり(よりによって岸部一徳と駆け落ちするなんて理解できない)、認知症を煩っている大楠道代が騒ぎを起こしたり、台風に直撃され、佐藤浩市が怪我をして歌舞伎に出られなくなったり。起きている出来事は実はかなり波瀾万丈だが、それが淡々とていねいに語られていく。

なかなかよくできた、大人向けの上質な娯楽映画だと思う。歌舞伎の演目である『六千両後日文章 重忠館の段』の内容がわかっているとさらに楽しめると思うけれど、劇中、瑛太冨浦智嗣に語って聞かせる筋だけではよく理解できず、映画と歌舞伎の内容がどのようにリンクしているのかがわからなくて残念。

大鹿村ってただの名前だと思っていたら、ほんとうに鹿がいるらしく、映画にも出てきた。鹿はパンダの次に好きなのでうれしい。しかも最近は訳あって鹿モードなので、超タイムリーだった。