T・ジョイ出雲で、クリント・イーストウッド監督の『ヒア アフター』(公式)を観る。イーストウッドの新作は、毎回観ようと思うのだが、なんだかんだで5年に一本くらいしか観ていない。今回は、田舎でも東京と同じ日に封切られる数少ない映画ということで、観るチャンスに恵まれた。
死後の世界を描いたというウワサを聞いていたので、冒頭の津波シーンで「これでふたりとも死んじゃってあの世の話になるのね」とか、「津波のあとの世界が実はあの世だなんて斬新」とか思ったのに全部はずれ。死後の話ではなく、来世や死者にとらわれた人たちが、現世を取り戻すお話だった。
映画は、パリ、サンフランシスコ、ロンドンを舞台に、臨死体験をしたフランス人ジャーナリスト、マリー(セシル・ドゥ・フランス)、死者と交信できるアメリカ人ジョージ(マット・デイモン)、分身ともいえる双子の兄を亡くしたイギリス人少年マーカスの三人の物語が並行して描かれ、最後に彼らがロンドンに集結する、という構成。こういう構成は好きだし、ひとりだけの話だと嘘っぽくなりがちなところ、三者三様の物語が、大津波や地下鉄テロなど実際にあった事件を盛り込みながら語られていて、なかなかうまくできている。
ただし、わたしは死後の世界などないと一点の疑いもなく信じているし(もし死んだあとで死後の世界があったらショックで立ち直れないかも)、死はしかたのないことで、死んだらずっと寝ていられてしあわせ、と思っている。だから、登場人物に共感するようなことはなく、かなり客観的に観た。なかなか着地点がわからないし、客観的に観てもおもしろかったけれど、最終的にはちょっとわかりやすすぎると思う。
