実録 亞細亞とキネマと旅鴉

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『妖術(요술)』(具惠善)[C2010-18]

東京国際映画祭13本めは、六本木ヒルズでク・ヘソン監督の『妖術』(TIFF紹介ページ)。アジアの風・アジア中東パノラマの一本。

数十年前の音楽学校を舞台に、男女三人の恋と友情に難病モノをプラスした青春映画。男の子二人はチェロをやっていて、女の子はピアノをやっている。男の子は、主人公というか語り手のミョンジン(イム・ジギュ)はちょっとさえなくて、ジョンウ(キム・ジョンウク)というのが才能もあってかっこいいという設定。しかし、このジョンウがわたしのきらいな王力宏(ワン・リーホン)に似ていて、しかも言動がいちいち思わせぶりなので、かなりの嫌悪感を感じる。

一方のミョンジンはなかなかかわいくていいのだが、おっさんになった現在の彼が冒頭から出てきて、これが何の魅力もないただのおっさんなのがいただけない。数十年後にこんなおっさんになると言われたら、百年の恋もさめるでしょう。ここは嘘でも安聖基(アン・ソンギ)にしておかないと(ちょっとさえないという設定からはずれるか…)。

映画自体も、やたらと時間を交錯させたりして、ジョンウの言動と同様、思わせぶりなだけで中身がないという印象。当時の韓国社会との接点がない点、韓国の作曲家の曲やアリランを使っているくらいしか韓国を思わせるものがない点なども、わたしの好みとは合わない。TIFF公式サイトのあらすじに、「映画史上この上ない感動が待受けているエンディングは必見」と書いてあるが、それがどこを指すのか、わたしには全くわからなかった。

ただ、リアリティのないレトロな学校の雰囲気や現実社会との接点のなさが、逆にこの映画の中だけの独特の空気を作っているとはいえる。そういった点や音楽がテーマであることから、否応なしに『言えない秘密』[C2007-34]を連想してしまうが、実際に影響があるのかどうかはわからない。

あと、演奏シーンで、本物の音大生みたいな人たちがものすごく嬉々とした顔で演奏したり歌ったりしているのがきもちわるかった。皇太子みたいな男が特に。

上映後、ク・ヘソン監督をゲストにQ&Aが行われたが、昼ごはんの時間を確保するためパス。監督インタビューの動画はこちら(LINK)。